デフケースの内面を旋削

 従来は高価な専用機械が必要だった加工に対応すべく、汎用の工作機械を工夫して低価格化を実現した例が、富士機械製造のNC旋盤「GEN400」だ。一体型デフケースの内面加工をターゲットに専用化したNC旋盤である(GEN400で加工したワークが表紙ページの写真における右上のデフケース)。同社の試算によると専用機械に比べて導入コストは約10%削減できる*1

*1 汎用チップが使えることによって、刃具費も約40%削減できるという。

 一体型デフケースのような形状では開口部が狭く、内面が奥まっている(凹部となっている)ために一般的な旋盤では刃物を当てにくい。そこでGEN400では、X軸方向(主軸の回転軸と直交する方向)に刃物の位置を変化させられる特殊な刃具ユニットを使い、内側の端面や側面をNC制御で加工する。

 刃具ユニットは、主軸の回転軸(Z軸)上に配置した2本のシャフトで挟み込むように支持する(図1)。各シャフトを伸ばしたり縮めたりすることで、刃具ユニットのZ軸上の位置を制御する。

図1●デフケースの内面を加工できるNC旋盤「GEN400」(富士機械製造)
(a)X軸方向に刃物の位置を変化させられる特殊な刃具ユニットを使い、一体型デフケースのように外側から刃物を当てづらい内側に曲面などを加工できる。写真はワークを取り外し、刃具ユニットを支持している様子を分かりやすくしている。(b)球面切削用の刃具ユニット。手前側の溝にシャフト(主軸と反対側)がはまり、回転させると刃物の位置が変わる。(c)平面切削用の刃具ユニット。刃物が2つ付いているのは、主軸側の側面と逆側の側面を加工するため。(d)シャフトの回転だけで刃先が曲面を描く球面切削用の刃具ユニット(試作品)。

 主軸側から刃具ユニットをサポートするシャフトはZ軸方向に直線移動するだけだが、主軸側と逆側から刃具ユニットをサポートするシャフトはZ軸方向の直線移動に加えてC軸(Z軸を中心とした回転)でも動く。このC軸を利用したシャフトの動きは、刃具ユニットそのものの向きには影響しないが、シャフトをはめ込んだ部分を介して内部の機構を動かし、刃物のX軸方向の位置を変化させられる。つまり、刃物が刃具ユニットから突き出たり、引っ込んだりする。

 このようにして、ワークの回転中心方向から支持された刃物の位置をX軸とZ軸の2軸で制御することで、ワークの内面に平面だけではなく曲面を加工できるようになる。シャフトの伸縮と回転で加工面の形状も制御可能なため、NCプログラムによって加工形状を自由に変更できる。切削条件を変えれば、面粗さの調整も可能だ。

 現時点では刃具ユニットとして、刃物が回転軸方向を向いた平面切削用刃具ユニットと、刃物が回転の半径方向を向いた曲面切削用刃具ユニットの2種類を用意*2。刃具ユニットを自動で交換する機能も備える。

*2 刃具ユニットには旋削用の汎用チップを取り付ける。

 内面加工だけではなく、他の部分の旋削加工や穴開け加工なども1回のチャッキングで実施でき、位置精度を確保しやすいのも特徴の1つだ。