第1回で述べた第1の取り組み、すなわちユーザーが求めている付加価値にジャストフィットした製品を提供する取り組みとしては、工作機械メーカー各社がラインアップに加え始めた低価格機が象徴的だ。
例えばジェイテクトは、費用対効果が高い工作機械の製品群として「e」シリーズを開発した(図1)。主に新興国での使用を想定している。
今回同社がeシリーズとして最初に市場投入するのが、円筒研削盤「e300G」、横型マシニングセンタ(MC)「e500H」、立型MC「e640V」の3機種だ。いずれも価格は従来機に比べて3割ほど安いが、基本的な加工性能については従来機と同程度の水準を確保しており、「決して“安かろう悪かろう”の製品ではない」と、同社執行役員の植竹伸二氏は強調する。
低価格化を実現できた理由は複数ある。制御システムを構成しているNC装置や制御盤などを内製化したこと*1、部品の一体化よって小型化・軽量化を進めたことに加え、eシリーズでは機能の絞り込みも行った。
*1 実は、ジェイテクトでは以前から研削盤用のNC装置を内製していた。そして今回、そこで培ったノウハウをMCに応用した。研削盤用のNC装置は技術の独自性が高い上、市場規模が切削加工機などに比べて小さい。それ故、「外部のNC装置メーカーは研削盤用のNC装置にそれほど力を注いでおらず、内製せざるを得ないのが実情」(植竹氏)だった。eシリーズでは、その経験が役立ったことになる。