2005年7月に日本でも上映が始まった「STAR WARS」シリーズの最終作「エピソード3/シスの復讐」。監督のGeorge Lucas氏を陰で支えたのが,米Lucasfilm Ltd.をはじめとする,同氏が設立した企業群である。自由自在な映画制作というLucas氏のビジョンを実現するため,一群の企業はデジタル・ビデオ技術の臨界を貪欲に押し広げてきた。現在は家庭のパソコンで使える映像や音声の編集システムも,源流を遡ればLucas氏に行き着く。エピソード3,そして将来の作品に向けて同氏が磨き続けるデジタル技術は,未来の消費者の手に渡る製品のひな型だ。
映画でストーリーを語るってことは,技術色のすごく強いメディアを利用するのと同じこと。どんなアートでもそうだが,特に映画では技術の限界にすぐにぶつかってしまう。とりわけファンタジーやSF,最近では叙事詩でさえ。
現在,映画製作に使っている技術は,僕ら自身が作ったり,開発を促したりした技術をかき集めたものといえる。始まりは1980年。僕らはコンピュータ部門を開設して,デジタル技術を使った映画製作を模索し始めた。当時はフィルムをコンピュータに出し入れするための装置を作っていて,Kodak社が協力してくれた。次に開発したのが,デジタル映像編集システムの「EditDroid」や,音声をデジタル編集する「SoundDroid」だ。その後,グラフィックス処理用のコンピュータ「Pixar」も作った。
開発した技術はILM (Industrial Light & Magic)社に移管したが,Pixarの部門は分離した。彼らは映画を作りたがっていたからね。僕らはあのころ映画に出資する気はなかった。もっとソフトウエアの領域に踏み込みつつあって,「Photoshop」みたいな技術を手掛けていた。それが僕らの仕事の手助けになると信じていたから。