サイクロン式掃除機や羽根のない扇風機など、独創的な製品を手掛ける英Dyson社の業績が好調だ。2011年度に売上高が10億英ポンド(1ポンドは約125円)を超え、利益は3億600万英ポンドと前年度より30%以上伸びた。コモディティー化が進んだ白物家電で高収益を上げられるのは、なぜか。創業者でChief Engineerを務めるJames Dyson氏に聞いた。(聞き手は大久保 聡=日経エレクトロニクス編集長、内田 泰)

——コモディティー化が進んでいる白物家電には、この先、進化する余地は少ないのではないか。

タイトル
James Dyson氏
英Dyson社 創業者/Chief Engineer(写真:加藤 康)

Dyson氏 そんなことはない。進化する余地は大きい。もっと高速に変化が進んでもいいくらいだ。

 ただし、消費者の嗜好には変化が出てきており、メーカーはそれが過去のものとは変わってきていることに気付かねばならない。過去にはいろんな機能が付いた製品が消費者の期待に添うものであったが、今は消費電力が小さい、使用する資源が少ない、さらにもっと長期にわたって使えるといったことに消費者の関心が移ってきている。

——なぜ、消費者の期待が変わってきたのか。

Dyson氏 消費者は1980年代や1990年代に、機器を購入するための十分なお金を持っていたと思う。ものを消費して、そのまま捨てるという社会だった。この時代は、機器を開発する側にとって悪い時代だった。なんらかのイノベーションを起こさなくても、メーカーは事業をうまくやっていけたからだ。こうしたやり方が、21世紀に入ってから立ち行かなくなっている。

 我々は、そうした生活様式の変化を理解し、新しい製品の開発に取り組んでいる。例えば、壁に掛けられるようにしたハンディ・タイプの掃除機は、掃除のやり方を変える。新しいモノの作り方やイノベーションというものは、こうした時代が大きくシフトしたときに生まれてくる。

——白物家電に対する要望は、国や地域によって異なる。グローバル展開に伴い、製品開発で苦労はないのか。

Dyson氏 確かに国や地域ごとに要望の違いはある。ただし、幸いなことに差は小さくなっている。 国や地域ごとの生活様式が似通ってきており、文化が近づいてきている。「Global Village(地球村)」に向かっているというところか。