配線が入射光の邪魔にならない構造に
BSI型CMOSセンサーが高感度化できるのは,その構造による(図3)。一般にCMOSセンサーは,汎用CMOSの製造ラインを使えて低コスト化しやすい上,周辺回路を1チップ化しやすい。しかし,フォトセンサー(フォトダイオード)の上に通常3層形成するメタル配線が入射光の一部を遮り,感度を劣化させていた。
一方CCDセンサーは,フォトセンサー上のメタル配線が1層に過ぎず,入射光がCMOSセンサーほどは遮られない。この結果,CCDセンサーの感度はCMOSセンサーに対して2倍ほど高かった。結婚式でのキャンドルや夜景も撮影するビデオ・カメラでは,この感度の違いからCCDセンサーが市場において有利な状況が20年以上続いてきた (別掲記事を参照)。
これに対してBSI型CMOSセンサーは,フォトセンサーの上部にメタル配線層が全くない構造である。具体的には,フォトセンサーの下側(裏面)から光を取り入れるようにしている。一般にCMOSセンサーはフォトセンサーの形成後に配線を形成することから,フォトセンサーの上側(表面)にメタル配線層ができてしまう。そこでBSI型ではフォトセンサーを形成したSi基板を薄くして,配線側ではなくこの薄いSi基板を透かして光をフォトセンサーに導くようにした。Si基板は,赤外光に対してほぼ透明であり,薄くすると短波長に対しても透明に近くなる。数μm厚にすることで可視光に対してもほとんど透明にする。