自動車社会は今後10年の間に、大きく変貌しなければならない。温室効果ガスに対する世界的な規制強化や原油高騰によって便利な移動手段というだけの役割では済まなくなる。果たして、どのように変貌すべきか。ヒントは、今後の普及を目指すEVやPHEV、FCVにある。こうした電動車両が広まれば自動車の負の部分が軽減され、さらに電力源の分散化によるエネルギー利用効率の向上を加速する可能性が高い。「電力インフラをより強固にする」ことが、今後10年で自動車が推進すべき課題である。
クルマは電力インフラに
10年後の自動車社会を展望
目次
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最終回:自動ブレーキが標準に
車内LANの高速化に注目
今後10年を見通したとき、電動化や情報化とともに、自動車は安全性でも大きく進展する。世界市場では今後も自動車の販売台数は拡大し、それに伴って交通事故による被害件数も増え続けることが予想される。その問題を解決するために開発が進み、一部実用化されているのが衝突回避システムである。
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第4回:家とクルマの連携が本格化
スマートフォンの台頭が後押し
自動車の電動化が急速に進む中、車両の充電管理をはじめ、V2H(Vehicle to Home)を実現する上で住宅とクルマの連携に欠かせないのが、情報提供サービスである。この分野では現在、大きな転換点が迫っている。スマートフォンの台頭である。無線通信インフラが世界的に整う中、高速な処理速度を備えるス…
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第3回:本格化する車両の市場投入
普及に向けた技術開発も進む
国内外を問わず、社会情勢から必要性が高まっている電動車両。2020年に向けて自動車メーカーはどのような車両を市場投入していくのか。各社でEV重視の姿勢とPHEV重視の姿勢に分かれるものの、どの自動車メーカーもHEVだけでなく、PHEVやEVの市場投入を2012年ごろから本格化させるのは間違いなさそ…
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第2回:高まるV2Hへの関心
FCVも再び表舞台に
残念ながら日本では「日本の電力網の品質は高い。だから、電動車両から電力供給を受ける必要性はない」との立場を電力会社は取り続けてきた。自動車メーカー側も当初は、走行用途以外に車両の蓄電池を使用すると「蓄電池の劣化を誰が保証するのか」といった課題があるとして、V2H(Vehicle to Home)や…
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第1回:狙うは電動車両の蓄電能力
2020年には原子力発電所128基分に
2020年、自動車に原子力発電所128基分の電力を蓄えることができるようになる──。これは決して絵空事ではない(図1)。世界では8億台ほどの自動車の保有台数がある。このうち、2020年に、市場のわずか0.3%が電気自動車(EV)、1%がプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)になったと仮定すると、E…