新構造のCMOSセンサー技術であるBSI(裏面照射)の製品化が相次いで始まった。BSI型CMOSセンサーは,まずはデジタル・カメラやデジタル・ビデオに搭載される。続いてハイエンドのカメラ付き携帯電話機への搭載が進む。低価格が売り物だったCMOSセンサーが,高画質用途に強いCCDセンサー市場を侵食していくことになる。出荷数量の大きな民生機器向けにBSI技術の導入が進むことによって,BSIの加工技術は3次元積層デバイスやMEMSデバイスなどほかのデバイスの進化をもたらす。

図1 イメージ・センサー大手がBSI型CMOSセンサーを相次ぎ市場投入 <br>左の円グラフは2008年における市場シェアの推定。テクノ・システム・リサーチのデータ。 CMOSセンサーのシェアはセンサー各社の出荷数量に基づく。右は日経マクロデバイスが作成。
図1 イメージ・センサー大手がBSI型CMOSセンサーを相次ぎ市場投入
左の円グラフは2008年における市場シェアの推定。テクノ・システム・リサーチのデータ。 CMOSセンサーのシェアはセンサー各社の出荷数量に基づく。右は日経マクロデバイスが作成。
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図2 大手各社がBSI型を相次ぎ投入 <br>(a)ソニーのデジタル・カメラなど向けと(b)OmniVisionの携帯電話 機向け。(c)Aptinaも携帯電話機向け。同社はエピ・ウエーハを使う。 各社のデータ。
図2 大手各社がBSI型を相次ぎ投入
(a)ソニーのデジタル・カメラなど向けと(b)OmniVisionの携帯電話 機向け。(c)Aptinaも携帯電話機向け。同社はエピ・ウエーハを使う。 各社のデータ。
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 ビデオ・カメラ向けにCCDセンサー市場を切り開いたソニーが,“CMOS化”を進めている(図1)。開発リソースをCCDセンサーからCMOSセンサーにシフトしているのである注1)。CCD最大手の同社が,イメージ・センサーの高画質品はCCD,低価格品はCMOSというすみ分けを自ら崩した形だ。今後もデジタル・ビデオやデジタル・カメラなどの高画質イメージ・センサー市場にCMOSセンサーを投入していく(図2)。

ソニーに続きCMOS大手3社が参入

 ソニーのCMOS化の流れを作ったのがBSI(裏面照射)技術である。BSIは,CMOSセンサーの唯一の欠点ともいえた感度の低さを新製造プロセスによって2倍に高めて解消するもの。既に同社が市場に投入したBSI型CMOSセンサー搭載機器の画質への評判は上々のようである注2)。BSI型CMOSセンサーは,高画質センサー市場において,今後,CCDセンサーを押しのけて主役に躍り出るポテンシャルを持つ。

注1)ただし,ソニーは,顧客が望めばCCDセンサーの出荷を継続するとしている。

注2)例えば,家電製品などの価格比較サイト「価格.com」のユーザーの書き込 みを見ると,暗所を撮影した場合の性能が高いという評判になっている。