疑似基地局を利用

 Apple社の主張は,同様の問題は他の端末でも起こる,専用のケースを装着すると受信感度が改善する,というものだ。今回は,端末の受信感度を測定して,それらの主張を検証した。

 受信感度の測定は一般的に,電波無響室に設置した疑似基地局を使って実施する(図2)。最初の作業は,測定用のSIMカードを,iPhone 4に適合するmicro SIMカードの大きさに加工することから始まった。手先の器用な大学院生が,SIMカードに埋め込まれたチップの位置を確認しながら慎重に加工する。加工した測定用SIMカードをiPhone 4に装着すると,アンテナ・バーの横の「SIMなし」の表示が,疑似基地局のID「00100」に変わった。

図2 擬似基地局で感度を測定
拓殖大学 産学連携研究センター附属電波無響室に疑似基地局を設置して,iPhone 4の受信感度を測定した。(図:拓殖大学のデータを基に本誌が作成)
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 比較のために,手に持たない状態のiPhone 4の受信感度測定から始めた。iPhone 4を実験器具に固定し,縦横に15度ずつ回転させながら,あらゆる方向からの電波に対する受信感度を3次元的に測る。iPhone 4に続いて,前世代機の「iPhone 3GS」と国内メーカー製の折り畳み型の携帯電話機も同様に測定した(図3注1)

注1) 今回の測定周波数は,国内の環境に合わせて2GHz帯に設定した。

図3 手に持たない状態の受信感度は同等
iPhone 4とiPhone 3GS,国内メーカー製の携帯電話機を回転させながら,3次元的な受信感度を測定した。赤い部分ほど受信感度が優れており,青い部分ほど受信感度が悪いことを示している。測定周波数は2GHz帯を用いた。(図:拓殖大学)
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 測定の結果,受信感度を示すTIS(total isotropic sensitivity)の値は,iPhone 4の-106.7dBmに対して,iPhone 3GSが-107.9dBm,国内メーカーの端末が-105.7dBmだった。この数値が小さいほど,受信感度が優れる。iPhone 4を含めたいずれの端末も,手で持たない状態での受信感度は同等と判断できる。