新興国への日本企業の投資が増大している。今求められているのは、国際的な視野を持ち、グローバルに活躍できる「グローバル人材」である。その代表は、本社から各国に派遣される海外派遣者だ。
では、日本から赴任する海外派遣者は現地スタッフからどう見られているのか。アジア地域への派遣者を対象に調査したところ、芳しくない結果が浮かび上がってきた。
今回の調査は、2008~2009年度の文部科学省の早稲田大学コンソーシアム(海外経営専門職人財養成産学連携プロジェクト、略称は「G-MaP」)で 実施したアンケート調査の一部である。中国とASEAN6カ国(フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム)、インドの日系企 業で働く日本人派遣者と現地人スタッフを対象に、書面とメールでアンケート調査を実施した。業種はエレクトロニクスや自動車、機械などの製造業を中心に、 金融や流通などのサービス業も含む。有効回収数は、日本人派遣者が880人(回収率60%、34社)、現地スタッフが2192人(同75%、88社)であ る。
日本人と現地人の上司の比較では、「業務遂行能力」「部下育成能力」「信頼構築能力」などの分類の62項目について直属上司を5段階で評価してもらった。日本人と現地人の差異は「t-検定」で検定し、統計的に有意な結果を調べた。
日本人派遣者のミッション達成度では、仕事の成果について六つの設問を用意し、自分の前任者や同格の現地人マネジャーと比較した際の自己評価を5段階で 聞いた。この結果から得た因子得点の平均値を「ミッション達成度」と定義した。これに加え、日本人派遣者の行動特性などの調査結果から抽出した「マネジメ ント能力」「リーダーシップ」「行動の柔軟性」「異文化への適応能力」という四つの因子と、「海外勤務年数」「海外勤務の希望の有無」「国別の差異」など のデータを組み合わせた回帰分析を実施した。
早稲田大学 政治経済学術院 教授