その一方,半導体業界では微細化技術の限界もささやかれています。毎年2倍のペースでフラッシュの大容量化が進むという「Hwangの法則」は今後も続けられるのでしょうか。

 われわれは2006年に32GビットのNAND型フラッシュを開発するなど,微細化と大容量化を継続してきました。しかし,微細化には限界がありますし,これから微細化のペースは遅くなるでしょう。それでも微細化のペースを少しでも維持できるように,技術革新を進めていきます。われわれは,微細化の限界を先に伸ばすことができる新型フラッシュ技術の「CTF(Charge Trap Flash)」を2006年に開発しました。また,1セル当たり3ビット以上を実現する多値化技術,複数のチップを重ねる積層技術を開発しています。このほかにも新たなブレークスルーが必要になるでしょう。

NAND型フラッシュのビット単価は,2007年初めのように急激に下がることがあります。そのため,メモリー・メーカーが期待通りの収益を上げることが難しい状況にあります。今後,どのように事業を進めていきますか。

 われわれは年率50%のペースでNAND型フラッシュの単価が下がるという前提で事業計画を立てています。しかし,NAND型フラッシュの応用製品がタイミングよく市場に登場しないと,年率50%以上のペースで単価が下落してしまうことがあります。2007年初めはそういう時期でした。携帯型音楽プレーヤに続くNAND型の応用機器が出てこなかったのです。しかし,2007年下期には音楽プレーヤ搭載の携帯電話機など有力な応用機器が市場に登場します。再びNAND型フラッシュの需要は拡大するでしょう。このようなことから,長期で見ると年率50%のペースでの単価低減と需要拡大が続いていくと見ています。

次の5~10年後の半導体業界はどのようになると見ていますか。

 次の5年間は半導体業界にとって極めて重要な時期になります。これは韓国SamsungグループChairman and Chief Executive OfficerのKun-Hee Leeが指摘している点でもあります。この時期には,技術開発力や市場創出力がない企業が,市場から脱落することになるでしょう。このためわれわれは,これまで以上に創造的で革新的な技術で,市場をリードしていく必要があると考えています。その意味で,装置・材料から応用機器まで幅広い技術を持つ日本と,さらに深い協力関係を築きたい。そのため,日本には頻繁に訪れています。

(聞き手は,三宅常之)

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