通信会社との協力関係を強化

 (b)複雑化に対応する手段としては,「Virtu-al Platform(ViP)」と呼ぶソフトウェア開発環境が挙げられる。ハードウェアが完成する前の段階で携帯電話機システムのモデリングやシミュレーションをすることによって,必要なソフトウェアを事前に開発できる。

 (c)低消費電力化に関しては,しきい電圧を変えられるMT CMOS(multi threshold CMOS)と呼ぶ回路技術が強みになる。MTCMOSではチップ・レベルでしきい電圧を変える技術と,回路ブロック・レベルで変える技術の2種類を準備している。回路ブロック・レベルの技術で最も重要な点は,EDAツールで回路を合成した時に自動的にMT CMOS版の回路を生成できる点にある。これによって,技術者による人為的な誤りが入り込む可能性を排除できる。MTCMOS技術によって,待機時のリーク電力を従来の1/100~1/1000に削減できることを確認し,すでにユーザーの携帯電話機に搭載している。

 (d)他社との協力関係の構築は,さまざまなソリューションを提供する上で欠かせない。例えば,携帯電話機向けのデジタル・メディア放送(DMB)のソリューションを開発する際には,通信会社と協力関係を結んだ。これによって,携帯電話機向けのLSI開発と並行して通信インフラ側の開発ができた。その結果,すべてのソリューションを約1年半という短期間で完成させることができた注3)

 以上のような取り組みを通じて,われわれは携帯電話機向けの総合的なソリューションを提供していく考えである。高解像度のMOS型イメージ・センサーや最先端ロジックLSI,ディスプレイ向けドライバLSIなど,携帯電話機に必要なほとんどすべての部品をソフトウェアまで含めて提供できるのは,われわれの大きな強みである。ただし,すべてを1社で実現できるとは考えておらず,業界の中での協力関係を重視していく。(談)

注3)通信会社との協業に加えて,IP( intellectual property)コア・ベンダーやソフトウェア・ベンダー,プロセス開発企業とも幅広い協力関係を構築している。


■2005年の記事へ
■目次へ
■2007年の記事へ