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第4回:事例に学ぶ(後編) 信じられるのは自分だけ

道本 健二=日経BP社、大槻 智洋=NE特約記者、台北科技市場研究
2012/09/18 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2009年11月16日号 、pp.45-47 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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40代,男性電源装置

【事例5】
一度ベンチャーに身を投じた後
再び元のメーカーに戻れた理由

 UPSなどの電源装置の開発を長らく続けてきたCさんは,珍しい転職経験を持っている。最初に入社した電子部品メーカーから,一度ベンチャー企業に転職した後,再び元のメーカーに再就職した。そのベンチャー企業は全くの別会社だったにもかかわらず,こうした転職が可能だったのにはどんな理由があったのだろうか。

 Cさんは1990年に,最初の電子部品メーカーに就職した。その会社の主力事業はパワー半導体の開発・製造だが,Cさんが選んだのは売上比率で10%程度の電源装置の部門だった。「層が薄いから,一線で働けると思った」ためだ。そしてUPSの開発を担当する。

一区切りが付いた

 1998年には,自分で考案した新方式のUPSを製品化した。事前に営業部員と一緒に客先を訪問して,商品を企画した。開発時には5人のメンバーのリーダーとなった。同社としては初めて,新製品を3機種同時に発売するといった画期的な仕事になった。そのせいもあってか,なんとなく自分の仕事が一区切り付いた感じがしていた。

 以前から,仕事で知り合ったベンチャー企業の社長から「ウチに来ないか?」としきりに誘われていたが,それまでは本気で考えたことはなかった。しかし,外の世界に飛び出してみたいという気持ちが高まり,2002年にそのベンチャー企業に転職した。不安もあるが,「最悪の場合でもなんとかなる」と決意した。

あえて難しいことにチャレンジ

 新しい会社ではマネジャーとして,電源システムの受託開発などを担当した。難しいことを,先陣を切ってやった。自動車メーカーからやって来た新社長に,「できないことをどうやるか,それが成長につながる」と言われて感銘を受け,発奮したからだ。「技術者は“技術+心”がなければダメだ!」という言葉は,その後のCさんの信念になっていった。

 そこでの実績の一つは,ラオスやバングラデシュに設置する気象レーダに,FlyWheel式のバックアップ電源を納めたことだ。FlyWheel式は学生時代の研究テーマでもあった。現地で仕事に追われていたとき考えたのは,「おれはやっぱり電源屋だ」ということ。あらためて自分の軸足を見定めた。

 それからは,技術者としてFlyWheel式電源をなんとか普及させたいと思うようになった。だが,ベンチャーでは量産技術を持っていないので限界があった。そこで,メーカーに戻ることを考え始めた。社長に相談すると「戻ろうなんて安易に考えるな!」と一喝された。人材紹介サービスに登録して転職先を探すこともしてみた。そのときに初めて,職務経歴書を書いた。結果的にはこれまでの実績を認められて,2008年に前の会社に戻ることができた。

Cさんが作成した職務経歴書の一部
[画像のクリックで拡大表示]

 言葉だけではなく,きちんと成果を残してきた自負はある。しかし,「人に恵まれた人生だと思う」。学生時代の先生,会社の上司,ベンチャー企業の社長などに大事なところで支えられてきた。そうでなければ,こんな生き方はできなかっただろう。技術者としての実力だけではなく,外向的な生き方やコミュニケーションが,財産と言うべき人的ネットワークを生む。

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