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第4回:高度600m、65tの重りで揺れから守る

制振装置

中山 力=日経ものづくり
2012/08/09 00:00
出典:日経ものづくり、2012年5月号 、pp.74-75 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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図1●制振機械室の構造
ゲイン塔の先端にある制振機械室に、TMDは設置されている。2層構造の制振機械室の上階(高さ625m)には25t、下階(同620m)には40tの振動体を持つTMDを配した。大林組の資料を基に本誌が作成。
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 「TMD(Tuned Mass Damper)」は、東京スカイツリーのほぼ先端、高さ600mを超える位置に設置された制振装置だ。25tと40tの重りを持つ2つの装置を、2層構造の制振機械室に設置する(図1*1。その目的は、風の影響でゲイン塔が大きく揺れるのを防ぐこと(3ページ目の別掲記事参照)。ゲイン塔が揺れると、そこに取り付けたアンテナの性能に悪影響を与えてしまうことになるのだ*2

*1 25tの重りを持つTMD1機でも、十分な渦励振の減衰性能を持ち、片方が作動しないような万が一の事態でも、もう片方がバックアップとして働くといメリットがある。

*2 TMDはゲイン塔の風による揺れを軽減するためのもので、地震などで塔が揺れるのを防ぐものではない。東京スカイツリーでは、中心部にある鉄筋コンクリート製の円筒状の構造体「心柱」と鉄骨の塔体の間をダンパで接続し、互いの動きを打ち消しあうことで地震時の揺れを軽減する。

 開発したのは、三菱重工鉄構エンジニアリング(本社広島市)。「重りの質量、振動数、設置スペースといった仕様とともに、大きな地震があっても壊れないこと、ストロークを最小限にすることなどが設計条件だった」(同社建築事業本部技術部免制振グループ主事の久保充司氏)。

重りが倒れこむ

 TMDは、倒立振り子型と呼ばれる制振装置で、煙突などの細長い構造物では1980年代から適用されている。風によって構造物の後方に発生するカルマン渦*3の発生周期と、構造物の固有振動数が一致すると、構造物が揺れ続けて根元部分の疲労破壊が問題になる。TMDはこの問題を解決するために開発された。

*3 カルマン渦 流れの中に構造物を置いたときや、流体中で構造物を動かした際に、構造物の後方に交互に発生する渦の列のこと。

図2●TMDの形状
ウエイトフレームをユニバーサル・ジョイント、ダンパ、ばねで支持して揺れを減衰する。図は、手前側の防舷材を省略してある。ばねは東海バネ工業(本社大阪市)製。
画像:三菱重工鉄構エンジニアリング
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図3●TMDの構造
ウエイトフレームは、平板の中央から棒が下に突き出たような形状で、棒の先端をユニバーサル・ジョイントで支えている。ばねとダンパはそれぞれ4本あり、ウエイトフレームの下面に取り付けることでウエイトフレームがユニバーサル・ジョイントを軸に傾く動きと逆向きの力を加えたり、動きを減衰する。防舷材は、ウエイトフレームの可動範囲(ストローク)を制限するためのもの。
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 その構造は次のようなものだ(図2、3)。正方形の板の中央を棒で支えたような構造のウエイトフレームの上面に、板状のウエイトを複数枚固定する(以下、この2つを合わせたものを「重り」と表記)。ウエイトフレームの棒状部分の先端は、ユニバーサル・ジョイントを介して建物とつながっており、ちょうど、ヤジロベイのように前後左右へ倒れるように動く。

 ウエイトフレームの倒れ込む動きを制御するのが、4本のばねと4本のダンパだ。ばねとダンパはウエイトフレームの下面と建物の間に、垂直方向に配置されている。さらに、重りのストロークを制限するためのストッパとして、防舷材を四方に用意した。

 TMDを設置した構造物が揺れると、それに伴って重りも移動する。具体的には、ユニバーサル・ジョイントを支点に倒れ込もうとする。するとダンパが伸び縮みするので、そこで振動エネルギが吸収されるわけだ。

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