「よ~し、今日は腰の切れもいいし、調子が良さそうだ。飛ばすぞ。それっ」

 「ファー!」(キャディーさん)

 「あれ、おかしいな。ちゃんと腰も回ってたし、肩も開かなかったはずだし。OBと は・・・」

 そして次のホール。

 「今度は力も抜いてリラックスして打つよ。それっ」

 「ファー!」(再びキャディーさん)

 「ガーン」

 ゴルフをたしなむ読者の中には、筆者も含めてこうした“悲惨”な経験をしたことがある方もいるだろう。自分では基本に忠実に打っているつもりなのに、なぜかボールはあちらの方へ。原因についていろいろ思案してみるが、解決策をなかなか見い出せず、OBを連発するはめに・・・。

 一般にスポーツの場合、良好なパフォーマンスは、頭の中にある理想的なイメージに身体の動きを合わせることができた時に生まれることが多い。市井のスポーツ愛好家にとって難しいのは、自分のプレイを「可視化」する機会が非常に少ないことだ。プロならほぼ毎日練習し、自分のスイングなどをビデオでチェックして頭の中のイメージと身体の動きを合わせていく。でも、スポーツ愛好家がプレーをいちいちビデオ・チェックするには手間がかかるし、専門家のアドバイスを受けるにはそれなりの対価も必要だ。

 OBを一発打ったら、その場で自分のスイングを再現して、修正に向けたアドバイスを提示してくれる。そんなサービスが実現されたら、飛びつきたくなるのは筆者だけではないだろう。実はここにきて、こうしたサービスの実現を予感させる技術が登場している。

距離画像センサでスイング動作を再現

図1 SoftKinetic社のブースで、Swinguru Proを試す男性

 2012年1月初頭に米国で開催された、世界最大規模の家電展示会「2012 International CES」。部品メーカーがブースを並べる南館の一角に、異彩を放つ光景が見られた。近づいてみると、男性がディスプレイの前でゴルフの素振りの動作を繰り返している(図1)。

図2 Swinguru Proの画面。スイング軌道などが3Dでリアルタイムに表示される
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 そのブースは、ベルギーSoftKinetic社のもの。同社は被写体までの距離情報を取得できる距離画像センサを搭載したモーション入力センサ装置などを開発する。ブースで男性が試していたのは、SoftKinetic社のモーション入力センサ装置を使ったゴルフ・スイングの解析サービス「Swinguru Pro」(ベルギーGuru Training Systems社製)である(図2)。

 Swinguru Proは、モーション入力センサ装置が捉えたユーザーのスイング動作に伴うデータを基に、身体の動き、スイング軌道、肩の回転などを3Dでリアルタイムに可視化する。スイング・スピードや重心の移動などのデータも表示する。距離情報を持った身体の動きデータを毎秒数百点取得することで、これを実現する。単にスイングをビデオで撮影するよりも、効果的なレッスンを可能にするとしている。