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HOMEスキルアップマネジメントスポーツ、未開の大陸 > 第5回:「体験を売る」、人間と向き合う科学的視点

スポーツ、未開の大陸

第5回:「体験を売る」、人間と向き合う科学的視点

デジタル・スポーツに隠れた脱売り切りのヒント

  • 高橋 史忠=日経エレクトロニクス
  • 2012/08/06 00:00
  • 1/2ページ
Skechers社による4000万米ドルの支払いを発表するFTCのWebサイト。
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 歩くだけでシェイプアップにつながる。そうしたイメージの広告を打ち出したスポーツ・シューズの発売元が、米連邦取引委員会(FTC)に巨額の和解金を支払うケースが相次いでいる。2012年5月には、米Skechers USA社が4000万米ドル(約31億円)を支払うことで和解した。スポーツ・シューズの機能を過大に広告する不当表示、というのがFTC側の判断だ。

 問題になったシューズは、「トーニング・シューズ」と呼ばれる分野の製品である。靴底を膨らませるなどの加工を施し、歩行に不安定感を出していることが特徴だ。これが歩行中に脚や臀部の筋肉の引き締め効果をもたらすとメーカー側は主張している。ちょうど、バランス・ボールなどを用いたトレーニングと同じような運動になるというわけだ。この“効果”が話題になり、1990年代半ばの登場後にトーニング・シューズは大きな市場に育った。FTCによれば、売り上げのピークは2010年で、10億米ドル(約790億円)近くの市場規模になったという。

 2011年9月には、ドイツadidas社傘下の米Reebok International社も、同じようにトーニング・シューズの過大広告を指摘された問題について、2500万ドル(約20億円)を支払うことでFTCと和解している。同社の製品を履いた歩行では一般的なウォーキング・シューズに比べて「臀部の筋肉を28%以上、ふくらはぎの筋肉で最大11%を強化できる」などとした広告をFTCは問題視した。Reebok社は和解後に「和解は、FTCの主張に同意したことを意味していない。これからもトーニング・シューズの技術開発を続ける」という趣旨のコメントを出している。

スポーツ分野で高まる科学的根拠の重要性

産業技術総合研究所(産総研)の持丸正明氏
(デジタルヒューマン工学研究センター 研究センター長)
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 スポーツ分野とエレクトロニクス技術の結び付きに詳しい産業技術総合研究所(産総研)の持丸正明氏(デジタルヒューマン工学研究センター 研究センター長)は、「スポーツやフィットネスの分野でも、効果に対する科学的な裏付けがこれまで以上に強く求められるようになった象徴的な出来事だ」と、トーニング・シューズの問題を分析する。

 例えば、最近はトーニング・シューズに限らず、裸足に近い感覚のシューズを履くなど、足を保護し過ぎない「ベアフット・ランニング」のようなトレーニング手法が関心を呼んでいる。ベアフットをうたうスポーツ・シューズの製品化も相次いでいる状況だ。「この分野は、『過保護にしない』という方向性と、保護しないことで『利用者にケガをさせない』ということを両立しなければならない。そうした難しい領域にスポーツ用品の開発が突入しているということだ」(持丸氏)。

 科学的根拠の重要性は、この1~2年で本格化しているエレクトロニクス技術を用いたデジタル・スポーツ関連にも今後波及するとの見方が強い。スマートフォンや専用の計測機器を用いたデジタル・スポーツ関連の機器分野で成否を握るのは、販売後のサービスだからである。センサなどを用いた計測結果をトレーニングのメニューや効果分析として提供するには、スポーツ分野の研究者との連携や、効果の科学的検証が欠かせない。「それを怠れば、企業ブランドを大きく損なう恐れがある」(持丸氏)のだ。

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