第2回から読む

 筆者の計算では、軽水炉で考えられる最大規模の放出放射能量は、福島第一原発事故の10~数10倍に及ぶ3、9、10)。そんな深刻な事態につながる苛酷炉心損傷事故は、地震や津波だけではなく、米スリーマイル島原発事故のような連鎖的機器故障やそれに伴う人為ミス、さらにはテロのような故意的破壊行為や航空機墜落といった外部飛来物などによっても引き起こされる。それだけに、軽水炉の安全性についてはより慎重に議論を重ねていかなければならない。

 特に最初に取り上げた放射能汚染の問題は、根本的には、苛酷炉心損傷事故時の最後の命綱である原子炉格納容器、すなわちMark I型の設計の是非に行き着く。そのMark I型の安全性については、1970年代に米国の原子炉メーカーや原子力規制委員会が検討し、その後の改良型Mark I型やMark II型の開発につながっている。Mark I型とそれらとの決定的な違いは空間容積の大きさであり、Mark I型の方が小さいのだ7)

 仮に、事故があった原子炉格納容器(Mark I型)の空間容積が2倍ほど大きかったら、圧力も温度も設計値以内に抑えられた可能性は高い。その場合、圧力抑制室の損傷は免れ、環境への放出放射能量も技術基準値以内に抑えられたと考えられる。