損傷原因として真っ先に思い浮かぶのは、地震動だ。しかし、2号機と3号機は隣接しているため地震の影響は同程度だったと推定されること、さらにはこの付近で観測された地震動は設計の基準地震動に近かったことの2つから、地震動により2号機の圧力抑制室だけが破損したと考えるのは難しい。

 2つ目の可能性は、耐震設計の不備である。東京電力によれば、福島第一原発では最初の「原子炉設置許可申請書」の段階で180ガルに耐えるように設計され、中でも原子炉格納容器をはじめ重要な機器に関しては270ガルまでの耐震性を持つことが確認されている。さらに、耐震指針の1978年の変更(旧耐震指針)によるバックチェックで370ガルに、2007年の変更(新耐震指針)で基準地震動として600ガルに引き上げられ、安全性は確保されていた。このことは「最近の地震応答解析法でも確認」(東京電力)されており、結果、バックフィットの必要性もなかったという。以上のことから、耐震設計の不備も2号機の圧力抑制室の損傷原因には当たらないだろう。

圧力逃し安全弁の作動と圧力抑制室の圧力変化の気になる関係

 そして3つ目の可能性が、地震や冷却材喪失事故、圧力逃し安全弁作動に伴い発生する圧力抑制室の動荷重だ。上述した通り、耐震設計には不備がない(地震動の影響はない)ことから、ここでは圧力逃し安全弁作動の影響を考察する。

 実は、2号機も3号機も、圧力逃し安全弁の作動回数は同じ1回だけで、原子炉圧力容器の圧力は共に7.5MPa(75atm)から0.1MPa(大気圧)まで瞬時に降下した1)。つまり作動回数だけから言えば、2号機だけに損傷が生じた事実を合理的に説明することはできない。ただし、圧力抑制室の圧力変化の仕方は異なる。問題の2号機では、圧力逃し安全弁が作動した直後から圧力抑制室の圧力が徐々に下がり始め、時間と共にさらに降下して3月15日の早朝6時には急降下している(図5)。この事実は、圧力逃し安全弁の作動と圧力抑制室の圧力変化が無関係ではなく、損傷が時間と共に拡大したことを示唆しているように思える。

図5●2号機の原子炉格納容器の(D/W)と圧力抑制室(S/C)の圧力変化
圧力逃し安全弁が作動した直後から圧力抑制室の圧力が徐々に下がり始めた。東京電力の資料を基に本誌作成。
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