設計・生産 ものづくり現場の競争力アップに貢献する
 
桜井 淳=物理学者・技術評論家
2012/07/30 00:00
出典:日経ものづくり、2012年7月号 、pp.80-84 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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第1回から読む

 原子炉格納容器からの放射性物質の漏洩ルートとして考えられるのは、[1]パーソナルエアロック、[2]機器搬出入口、[3]電気ペネトレーション(ケーブルが貫通する部分)、[4]ウエットウエルのベント操作、[5]上蓋パッキン、の5つだ*7、2)。この中で最も可能性の高いのが、[4]ウエットウエルのベント操作と、[5]上蓋パッキンの2つである。しかし上述した通り、ウエットウエルのベント操作は主たる漏洩ルートにはなり得ないから、上蓋パッキンから漏れたと推測するのが妥当だろう。

 上蓋は、原子炉格納容器の最上部にある巨大なドーム形状の部分を指す(図47)。本体とは円形のフランジでつながり、気密性を確保するために、そこには弾力性と耐熱性に優れた角型シリコーンゴム製パッキンを配した上で、ロボットシステムを利用した正確なトルク管理でボルト締結している。

図4●Mark I型と改良型Mark I型の構造図
(a)はMark I型、(b)は改良型Mark I型。両者の構造はほぼ同じだが、大きさが異なる。Mark I型改良型の方がMark I型より原子炉熱出力比で1.4倍、ドライウエル空間容積比で2.1倍、ウエットウエル空間容積比で1.7倍、プール水量比で1.3倍大きい。改良型Mark I型では原子炉熱出力比の割にドライウエル空間容積比が大きいのは、Mark I型の欠点を「改良」したためだ。原子力安全委員会の資料を基に本誌作成。
[画像のクリックで拡大表示]

 シリコーンゴム製パッキンは-60~250℃の耐熱性を持つ。しかし、過酷な圧力と温度の下では熱変形して気密性が損なわれる恐れがある。東京電力の報告書によれば、1~3号機の原子炉格納容器の設計圧力と温度はドライウエル空間、ウエットウエル空間ともに約400kPa(ゲージ圧力)と138℃である。これに対し事故時の圧力と温度は、1号機で約800kPa(同)と約500℃*8、2、3号機で約600kPa(同)と200℃弱と、いずれも設計値を大幅に超えている*9。こうなると、パッキン部から原子炉格納容器内の高温高圧の水素や窒素と一緒にヨウ素131やセシウム137などの放射性物質が噴き出す可能性は高い。

*7 通常運転時における原子炉格納容器からの放射性物質の漏洩率は、1日当たり全容積の0.368%以下である。なお、定期点検時の気密試験では加圧水型は0.1%、沸騰水型では0.5%と評価されている。
*8 文献2)によれば、2011年3月13~15日にかけ、温度は600~800℃に達していたとされる。
*9 1~3号機全てで、2011年3月15日に最高温度を記録している。

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