土地汚染、食品汚染はチェルノブイリ原発事故並み

 福島第一原発事故の深刻さについては、国際原子力事象尺度*1が環境への放出放射能量を根拠に、1986年4月に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」と位置付けている。これは最も深刻なレベルだが、両事故には本質的に大きな差がある。

 チェルノブイリ原発事故は、原子炉格納容器がない状態で炉心の核的大爆発*2が起きた。これに対し福島第一原発事故では、原子炉格納容器の外側で水素爆発が発生した。両事故の大きな差とは、福島第一原発において、到底満足できるレベルではないものの原子炉格納容器が一定の機能を果たしたという点だ。

 その結果、筆者の計算では、福島第一原発事故による放出放射能量は大きく見積もっても、地震によるスクラム時の1~3号機3基分の炉心放射能量のわずか3%程度にとどまっている3)。残り約97%は、1~3号機の原子炉圧力容器と原子炉格納容器の中に閉じ込められたのだ。実際、福島第一原発事故の放出放射能量自体はチェルノブイリ原発事故と比べて1/7と少ない。

 従って、放射性物質が人間の体内に取り込まれ、それが長期間にわたって放射線を出し続けることで発症する晩発性がん患者のリスクも、チェルノブイリ原発事故の時よりも小さくなると考えられる。ところが、だ。事はそう単純ではない。

*1 国際原子力事象尺度 国際原子力機関が定めた事故評価の1つの目安。「レベル0」(尺度外)から、「レベル1」(逸脱)、「レベル2」(異常事象)、「レベル3」(重大な異常事象)、「レベル4」(施設外への大きなリスクを伴わない事故)、「レベル5」(施設外への大きなリスクを伴う事故)、「レベル6」(大事故)、「レベル7」(深刻な事故)まで8段階ある。評価は、作動した安全系の種類、施設の損傷状況、従事者被曝線量、環境への放出放射能量を総合的に判断して決められている。
*2 核的大爆発 制御棒引き抜きやそれに相当する(熱中性子吸収の比較的大きな冷却水の炉心からの蒸発など)反応度で核分裂反応が急速に促進される反応度事故のこと。