【前回より続く】

 「エピソード3/シスの復讐」は,30年近く前にGeorge Lucasが紡ぎ始めた,STAR WARSシリーズの頂に位置する作品だ。同時に,米Lucasfilm Ltd.をはじめとする各社が追い続けたデジタル技術の到達点でもある。依然としてデジタル・シネマに懐疑的な業界の真ん中で,彼らは幾つもの新技術に火を付け,導き,かき立てて,世に送り出した。

 その1つが,デジタルHDビデオ・カメラである。エピソード2で果たせなかった理想のカメラを実現するため,STAR WARS新3部作のプロデューサーのRick McCallumと,米Industrial Light & Magic(ILM)社のFred Meyersは,2002年6月に日本へ飛ぶ。ソニーやフジノンの技術者たちと,新たな挑戦を議論するために。エピソード3の撮影は,ちょうど1年後の2003年6月,オーストラリアのシドニーで始まる。

 彼らは,後に「HDC-F950」と呼ばれる新たなカメラの原型として,1999年にソニーが発売した「HDC-950」を選んだ。テレビ局向けのデジタルHDビデオ・カメラで,4:2:2のコンポーネント信号を記録する。エピソード2の撮影に使った「HDW-F900」との大きな違いは,VTRを内蔵せずに外付けして使うことだった。エピソード2の経験は,FredにVTRの内蔵をやめ,より軽く小さいカメラを使うべきことを教えた。以前のHDW-F900でも外付けのVTRを利用しており,内蔵VTRはあくまでも万一に備えたバックアップ用だった。