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任天堂に学ぶ、ユーザーを引き付けるノウハウ(前編)

サイトウ・アキヒロ=立命館大学 映像学部 教授
2012/07/03 00:00
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本記事は、日経エレクトロニクスのコラム「NEアカデミー」に掲載された、「ゲームのチカラ 連載1回目(2012年5月14日号)」を要約、2回に分けたものです(内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)。詳細は同号をご覧ください。

 「あっという間に数時間が経過していた」「説明書を読まなくても楽しめた」─。ビデオ・ゲームをプレーしたときに、こうした経験をしたことはないだろうか。ゲームは、「人を思わず夢中にさせる仕組み」や「快適で使いやすいユーザー・インタフェース(UI)」などを実現することに長けている。

 このノウハウを体系化した理論が、「ゲームニクス」である。「ゲームの構造(=ニクス)」という意味の造語である。20年以上、ゲーム・クリエーターとして活動している筆者の経験を基にまとめたものである。

 ゲームニクスは、「直感的で快適なUI」「マニュアル不要の操作理解」「はまる演出」「段階的な学習効果」「現実世界と仮想世界のリンク」の五つを実現するノウハウに大別できる。

 こうしたノウハウは、現在の家電業界が抱える課題を解決する有効な手段になる。これまで家電業界では、性能や機能といった“カタログ・スペック”に重きを置いた競争が頻繁に繰り広げられてきた。以前はそれらが製品の魅力に直結していたが、現在ではこの手法は通用しにくくなっている。スペック競争を加速させても他社と差異化できず、さらに複雑で使いにくい機器が増えてしまった。ゲーム制作のノウハウは、この状況を打破し、再び魅力のある製品を生み出すきっかけになる。

任天堂に学べ


 かつてのゲーム業界も、家電業界と同じような状況に陥ったことがあった。新しいゲームを提供するために、ハードウエア性能の向上を追求し、高画質なゲームを提供し続けた。その一方で、新たな要素を盛り込み過ぎてゲームの操作は複雑になり、いつしかゲーム好き(コア・ゲーマー)以外は楽しめないものになっていた。

 この状況を打破したのが、任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」シリーズと、据え置き型ゲーム機「Wii」である。DSに搭載したタッチ・パネルや、Wiiのコントローラに搭載した加速度センサを活用し、直感的に操作できる分かりやすいゲームを提供することで、ユーザーの裾野を一気に広げた。

 DSやWiiが証明して見せたのは、単なる多機能化ではなく、ユーザーの立場で考えた使いやすいUIなどを実現することで、新たな“ゲーム体験”を提供できるということだ。これこそが、今のエレクトロニクス企業に必要な考え方である。

 こうした発想を、任天堂は「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」時代から培っている。筆者はファミコン時代から任天堂と一緒に仕事をしてきており、この経験を基にゲームニクスをまとめた。
――続く――

なお、サイトウ・アキヒロ氏は7月12日のセミナーに登壇予定です。詳細は以下をごらん下さい

【9月15日(火)開催】触るインタフェース(応用編)
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