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第2回:創造を見抜く上司とトップの眼力

小林三郎=中央大学 大学院 戦略経営研究科 客員教授(元・ホンダ経営企画部長)
2012/07/09 00:00
出典:日経ものづくり、2012年3月号 、pp.106-112 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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――ホンダではイノベーションとオペレーションを区別し、別の尺度で評価すると聞いているが具体的にはどう違うのか。

図1●衝突安全の3要素
図1●衝突安全の3要素
衝突の際は、「ボディ骨格」「拘束装置」「クッション構造」で乗員を保護するのが基本。

 もう全く違う。例えば、エアバッグの開発初期段階の時、久米是志さん(当時、ホンダ専務で後の3代目社長)への報告会でこんなことがあった。久米さんが突然、「クルマの安全の基本的要素は何か聞いてきた。このエピソードはイノベーションを評価する際の尺度を典型的に示している。

 俺は、そんな質問は想定していないから何も準備もしていない。その場で必死になって考えて、「はい、私がやっているエアバッグに関係する衝突安全について答えます」と、まず自分の専門分野に引き寄せてから、こう説明をした。

 「衝突安全の最大の目的は乗員の保護です。そのためには、まずはボディ骨格で乗員を保護する必要があります。ボディ骨格は、衝撃を吸収するための潰れやすい部分と、乗員の生存空間を確保するための潰れないコア部分で構成します。

 次に、拘束装置が必要になります。シートベルトやエアバッグなどです。こうした拘束装置で乗員をコア部分にとどめておく、つまり拘束します。拘束装置がないと、乗員がハンドルやインスツルメント・パネル(インパネ)にぶつかったり最悪の場合は車外に放り出されたりして、危険にさらされてしまいます。

 そして3つめが、クッション構造です。拘束装置は完璧ではないので、乗員がハンドルやインパネにぶつかることもあり得るからです。それに備えてこれらの部品の表面にクッション性を持たせ、衝撃を吸収できるようにしておきます。つまり、『ボディ骨格』『拘束装置』『クッション構造』の3つが衝突安全を構成する基本要素となります(図1)」。

 何とかこの結論にたどり着いたが、自信満々というわけにはいかなかった。衝突安全は日ごろから取り組んでいる専門分野だが、時間をかけずに即答したので、何か重要な要素が抜け落ちている可能性がある。俺は不安げな顔をしていたかもしれない。その時たぶん、久米さんは俺の答え方や目を見ていたはずだ。久米さんは、ギロリと目を光らせて
「小林さん、4つめは何かね」
と聞いた。

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