有機ELやタッチ・パネルで付加価値を向上し、2012年は利益を出す――。台湾TFT液晶パネル大手のAU Optronics(AUO)社は2011年12月のインタビュー取材で、赤字が続くFPD事業の巻き返しについてこのように語った(当時FPD事業の責任者の立場だったPaul SL Peng(彭双浪)氏へのインタビュー記事)。その後の巻き返し策の進捗はどうか。また、機運が高まっている台日連携について、2012年1月にAUO社のPresident(総経理)に就任したPeng氏に聞いた。

台湾AU Optronics社 PresidentのPaul SL Peng(彭双浪)氏
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――2012年のFPDの市場予測に変わりはありませんか。

 テレビ向けパネルのように2011年末から変わっていないものもありますし、ノート・パソコン向けパネルのように上方修正したものもあります。

 テレビ向けの2012年の世界市場(数量ベース)は、引き続き、前年比10%増と見ています。モニター向けも変わらず、同3%増の予測です。モニターの中では、公共情報表示用ディスプレイ(PID:public information display)の市場が伸びていくと見ています。ホテル向けを除いても、2011年の200万台から2012年は400万台に成長し、2013年以降も毎年2倍のペースで伸びていくでしょう。成長市場は、55型以上の大型分野と教育用途の二つで、爆発的な成長が見込まれます。特に中国とトルコは、教育用途の有望市場です。

 ノート・パソコン向けは、市場予測を同10%増に上方修正しました。ミニノート向けはマイナス成長ですが、「Ultrabook(ウルトラブック)」向けが急成長します。ウルトラブックの伸び率は、価格に大きく依存するでしょう。700~800米ドルになれば、市場は爆発的に成長すると予測します。タブレット端末向けは同50%増と見ています。

 中小型パネルは、第1に、車載用の市場が伸びます。今後はカー・ナビゲーション機器の普及が急速に進むからです。1台のクルマに2枚以上のディスプレイを搭載する人も出てきます。従って、新車販売台数が増えなくても、車載用パネルの市場は伸びていきます。

 第2に、スマートフォン向けの市場が伸びます。現在のスマートフォンの世界市場規模は約5億台で、携帯電話機全体の約25%しか占めていません。これが、今後は30%、40%へと比率が高まっていきます。しかも、ディスプレイの大型・高精細化が進むため、パネル枚数の伸び以上に、ガラス基板使用面積は伸びます。携帯電話機市場では、スマートフォンに力を入れている米Apple社や韓国Samsung Electronics社のシェアが伸びる一方で、伝統的な携帯電話機に重心を置いてきたフィンランドNokia社などのシェアが低下しています。従って、携帯電話機メーカーは今後、スマートフォンに一層力を入れていくことになります。また、安価なスマートフォンが台頭しており、この出荷数も増えます。