デジタル・シネマの先駆けとなった映画「STAR WARS EPISODE 3」。この開発の舞台裏をドラマ仕立てでご紹介する。制作で陣頭指揮したジョージ・ルーカス氏を含め関係者に 取材して出来上がった。
STAR WARS:The Digital Cinema Revolution
目次
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“Going into Television”,Lucas氏に聞く(下)
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“Going into Television”,Lucas氏に聞く(上)
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第18回:Lucasfilmバージョン2.0(下)
Lucasfilm社は,格段に豊富になったメタデータをどう使ったのか。Fredによると,結局このシステムのメタデータは,俳優の映像と背景の映像を一致させるには精度が足りなかった。ただしメタデータがあることで,撮影は大幅にスピードアップした。例えば撮影済みの背景と合成する俳優の演技を撮るときに,背景の…
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第17回:Lucasfilmバージョン2.0(上)
「エピソード3/シスの復讐」は,30年近く前にGeorge Lucasが紡ぎ始めた,STAR WARSシリーズの頂に位置する作品だ。同時に,米Lucasfilm Ltd.をはじめとする各社が追い続けたデジタル技術の到達点でもある。依然としてデジタル・シネマに懐疑的な業界の真ん中で,彼らは幾つもの新技…
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第16回:世界を駆け巡るDVD(下)
エピソード3で花咲く技術の1つが,「pre-viz」である。カメラで撮影する前に,シーンをコンピュータ・アニメーションで素描する技術で,従来の絵コンテを置き換えるものといえる。この技術を推し進めるため,Lucasfilm社はエピソード2の制作後期に,パソコン業界から米Advanced Micro D…
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第15回:世界を駆け巡るDVD(上)
米Lucasfilm Ltd.と米Industrial Light & Magic社の作業の全成果を収録した1本のHD D5テープと,ハード・ディスク装置に記憶した音声のファイル。米THX Ltd.のRick Deanが率いるチームは,そこから十数種類にも及ぶ劇場公開用のデジタル・マスタ・ファイルを…
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第14回:溶けていく街並み(下)
24フレーム/秒で撮影できるHDビデオ・カメラを強く望んだLucasfilm社のこだわりとは裏腹に,F900は特定のフレーム速度でしか撮影ができないことが,ポスト・プロダクション工程に問題を残した。映画では,爆発や衝突などのシーンで,24フレーム/秒よりも速い速度で撮影することがある。上映時にシーン…
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第13回:溶けていく街並み(上)
George Lucasと米Lucasfilm Ltd. は,ソニーと米Panavision Inc.が試作したデジタルHDビデオ・カメラ「HDW-F900」のみに頼って,「エピソード2」の全編を撮影するという,大きな賭けに出た。2000年9月に撮影の最初の段階は終了する。生身の俳優と現実のセットを…
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第12回:リグ(仕掛け)と包(パオ)とチュニジアの魚運搬車(下)
エピソード2の技術面での目玉は,大手配給の映画で初めて,すべてをデジタルで撮影したことである。ソニーと米Panavision Inc.が撮影開始のわずか3カ月前に手作りで完成した,デジタルHDビデオ・カメラ「HDW-F 900」のプロトタイプを,全面的に採用した。技術の限界を押し広げてきたLucas…
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第11回:リグ(仕掛け)と包(パオ)とチュニジアの魚運搬車(上)
製品開発に例えるなら,「エピソード1」はプロトタイプ,「エピソード2」は最初の量産モデルといえるだろう。George Lucasが抱いたデジタル・シネマの理想は,エピソード2で実現への一里塚を越えた。ただし,最初の製品にありがちな,難点やバグが残っていたことも確かである。それらの改良は,「エピソード…
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第10回:MPEG-2ブルース(下)
急いで開発した場合によくあるように,Optimodeには改善の余地があった。これが,OptimodeをOptimizerに変える要因になった。Optimodeで使ったSMPTEカラー・バーの代わりに,THX社は色相,彩度,明度にそれぞれ対応する新たなパターンを考案した。
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第9回:MPEG-2ブルース(上)
2000年3月。ソニーと米Panavision Inc.が開発したデジタルHDビデオ・カメラ「HDW-F900」は,無事George Lucasの眼鏡にかなった。これを受けて米Lucasfilm Ltd.は,6月にオーストラリアで「エピソード2/クローンの攻撃」の撮影を開始する。9月をメドに撮影を終…
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第8回:拍子抜けの決断(下)
開発期間中ずっと,ソニーの三上泰彦はLucasfilm社をはじめとする他社のメンバーと電子メールや携帯電話で頻繁に連絡を取り合った。ソニーとLucasfilm社は,2~3カ月置きに1度,直接会って話すミーティングをスカイウォーカー農場で開いた。そのたびに三上は,最新の試作機やPowerPointで作…
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第7回:拍子抜けの決断(上)
24p―プログレッシブ方式で24フレーム/秒―で撮影できるデジタルHDビデオ・カメラを開発するには,ソニーの力だけでは足りなかった。彼らは,映画会社がカメラを使いこなすための環境を,他社と協力して整えなければならなかった。例えば,撮影したビデオ映像をフィルムに変換するテレシネ装置や,カメラと組み合わ…
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第6回:24フレームの呪縛(下)
Fredの欲望を如実に物語るのが,エピソード1で仕掛けた実験だ。デジタルで撮影したシーンを幾つか紛れ込ませ,実際の観客の反応を見ようというのである。Fredと彼のチームは,ジェダイ・マスターのクワイ=ガン・ジンを演じるLiam Neesonと,若き日のオビ=ワン・ケノービ役のEwan McGrego…
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第5回:24フレームの呪縛(上)
「エピソード1/ファントム・メナス」は,大手映画会社が配給する映画として,史上初めてデジタルで上映された。エピソード1がデジタル・シネマ技術になした貢献は,それだけではない。エピソード2,エピソード3で花開く技術が,エピソード1にも「ちょい役」で参加している。
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第4回:「ありがとう」とジョージは言った(下)
デジタル・マスタの制作作業が殊の外難航する原因を作ったのが,上映に2方式のプロジェクタを採用したことだった。TI社のDLP方式に加え,米Hughes Aircraft社と日本ビクターが共同開発したILA方式のプロジェクタの利用も決めた。映像の表示にDMDを用いるDLP方式に対し,当時のILA方式はC…
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第3回:「ありがとう」とジョージは言った(上)
米Lucasfilm Ltd.の面々が,どやどやと劇場に入ってきた。同社の本拠地・スカイウォーカー農場内にある,映画館顔負けの設備・Stag Theater。席に着く人々の喧噪の中,米Texas Instruments Inc.でDLP Products,Commercial Entertainme…
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第2回:ハリウッドを遠く離れて(下)
1998年12月。まばゆい陽光の降り注ぐ午後。普通の映画館と変わらぬたたずまいの劇場の中,Doug Darrowは胸の高鳴りを抑えることができなかった。最初の1本を見てからずっと,STAR WARSにぞっこんだった。自分の目の前に「彼」が現れる日が来ようとは,この期に及んでなお夢のようだ。
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第1回:ハリウッドを遠く離れて(上)
デジタル・シネマ発祥の地として,ここまで不釣り合いな場所もないだろう。