台湾では今、日本との連携への機運がかつてないほど高まっている。台湾Hon Hai Precision Industry社(鴻海精密工業、通称Foxconn)とシャープの提携は、その象徴といえる。台湾と日本のハイテク産業の連携を後押ししようと、台湾の行政機関も奔走している。日本の内閣に相当する台湾行政院は2011年12月16日に「台日産業連携架け橋プロジェクト」を認可し、この政策に基づいて行政院 経済部(日本の経済産業省に相当)は工業局内に「台日産業連携推進オフィス」を設置した。台日産業連携企業を対象にした工業区「台日産業イノベーションパーク(TJ Park)」の設置などを進めている。日本の経済産業大臣に相当する台湾行政院 経済部 部長のYen-Shiang Shih(施顔祥)氏に、台湾ハイテク産業の発展策や台日連携について聞いた。

台湾行政院 経済部 部長のYen-Shiang Shih(施顔祥)氏
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――台湾の産業発展における台日連携の意義とは。

 台湾と日本は地理的に近く、台日連携には長い歴史があります。それぞれの時代で、それぞれの意義がありました。以前は、日本が台湾に投資して委託生産をする事例が中心でした。これによる台湾の経済発展への貢献は大きく、すごくありがたいことでした。現在は、日本企業が台湾へ進出するだけではなく、台湾企業のノウハウを日本企業が取り入れる連携もあります。連携が双方向になり、深みが増しています。連携の中身も豊富になっています。

 将来は、この双方向の連携が進むことによって、世界の中の台日連携になっていくでしょう。最近、台湾のHon Hai Precision Industry社(鴻海精密工業、通称Foxconn)が日本のシャープに投資しました。両社が今回の提携で視野に入れているのが、グローバル市場です。台日連携によって、日本でも台湾でもない第3の場所に進出するケースは徐々に増えるでしょう。

 流通・サービス産業では、良い先行事例があります。日本のコンビニエンスストアの「ファミリーマート」です。ファミリーマートは台湾企業と提携して台湾市場に進出しました。台湾に設立した「台湾ファミリーマート」は現在、台湾第2位のコンビニエンスストアの地位を確立しています。日本のファミリーマートはその後、台湾ファミリーマートや、中国および台湾の食品・流通最大手「頂新グループ」と協業し、上海など中国大陸4カ所への進出を果たしました。

――台湾の産業発展を担う立場として、FPD産業をどう位置づけていますか。

 FPD産業は、台湾にとって重要な産業です。エレクトロニクス産業全体の中で、FPD産業はなくてはならない産業と位置づけています。テレビ、モバイル、パソコンなど、すべての機器にディスプレイが使われているからです。

 FPD産業の中心である液晶パネル産業では、多くの技術を日本から取り入れてきました。日本の技術革新の力には敬服するばかりです。製造装置や部品・材料のほとんども、日本から供給を受けています。台湾のFPD産業は、日本を頼って今日まで来たのは事実ですし、日本との関係は親密です。また、日本の機器メーカーと台湾のパネル・メーカーは様々な形で協力しています。このような緊密な連携は、もっと進めていきたいと思います。