エネルギー
 

第2回:高電圧に耐える

狩集 浩志=日経エレクトロニクス
2012/06/22 00:00
出典:pp.67-68、2010年5月17日号 、 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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 全固体電池は,現状のLiイオン2次電池を安全で長寿命にするためだけではなく,エネルギー密度を向上させる上でも重要な開発テーマである。エネルギー密度を高められるという全固体電池の特徴をもたらす理由の一つが,固体電解質の電位窓の広さである。従来の有機電解液は電池電圧として4V弱を超えると電解液の分解が始まってしまうことから,電池の上限電圧を引き上げるのはかなり難しかった。

†電位窓=溶媒と塩から成る電解液が酸化還元反応を示さない電圧の範囲のこと。溶媒と塩,電極材料によって決まる。

 Liイオン2次電池は現在,高容量化を図るため,負極材料を電流容量が高いSi系などに変更しようとしている注2)。負極材料とともに正極材料の高容量化も重要となるが,正極材料にはすぐに電流容量を高められる有力な候補がない。そのため,正極材料では電流容量は同じながら,高電圧化してエネルギー密度を向上させる,いわゆる5V系正極材料の利用を目指している。

注2) 日立マクセルは,スマートフォン向けにSi系負極材料を用いたLiイオン2次電池を2010年6月から出荷する。このほか,パナソニックが2012年度から量産することを表明している。

 ところが,5V系正極材料を用いようとすると,従来の有機電解液では電解液が分解してしまい,電池の電圧を上げられない。そこで,電位窓が広いとされる固体電解質を用いることで,5V系正極材料を積極的に利用することができる注3)

注3) 固体電解質は固体であり,電極材料と電解質の界面がひとたび反応するとそれ以上に反応が進みにくいことから,有機電解液に比べて分解しにくく,電位窓が高いとされる。

 さらに,ポストLiイオン2次電池として注目されるLi-S電池やLi空気電池といった次世代電池の実現にも,固体電解質は重要な役割を果しそうだ。Li-S電池では正極材料に硫黄(S)系材料を用いるが,有機電解液を用いるとSが電解液中に溶け出す問題がある。固体電解質を利用できれば,こうした問題を解消できる。

†Li-S電池=正極材料にSを,負極材料にLi金属を用いた2次電池。Sの理論容量が1672mAh/gと高いことから,Li-S電池の理論エネルギー密度は約2600Wh/kgとされている。

†Li空気電池=正極に大気中の酸素を利用するため,質量当たり,および体積当たりのエネルギー密度が飛躍的に向上することから,究極の電池として研究されている。ただ,空気極での還元反応の難しさなどが指摘されている。

 究極の電池とされるLi空気電池については,正極に空気を通す構造が必要となる。そのため,液体ではない固体電解質の方が電極構造の簡略化が図れる可能性がある。

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