ドイツInfineon Technologies社の日本法人インフィニオン テクノロジーズ ジャパン 代表取締役社長 森康明氏へのインタビュー後編(前編はこちら)。ここでは、グローバル展開が特徴の同社の魅力について聞いた。(聞き手は、大久保 聡=日経エレクトロニクス編集長)

――顧客にとって、御社が広くグローバル展開していることは、どんな利点となりますか。

 日本の電装メーカーが海外の自動車メーカーに製品を納入するケースは、これからますます増えていくでしょう。そうなるほど、顧客はInfineonの価値の高さを実感していただけるはずです。なぜかというと、Infineon社は欧州と米国で自動車メーカーと直接話をしており、自動車メーカーからは電装メーカーではなく半導体メーカーである我々に提案がときどき持ち込まれることがあります。「Infineonだったら、こういう経験があるはずだ」と、我々の技術や経験を評価していただいているからです。

 従って、日本の電装メーカーが海外の自動車メーカーに製品を紹介する際、Infineon社の半導体を使っていると、技術面だけでなく半導体製品の供給面やサポート面もしっかりしていると理解されやすくなるでしょう。そうなることで、我々は日本の電装メーカーともっと複雑で戦略的なお付き合いができるようになるとみています。

――パワー半導体などパワー関連の日本におけるビジネスの状況はいかがでしょうか。

 産業分野に向けたような大きな電力を扱うパワー関連ですと、我々にとって日本市場はとても難しいところですね。なぜかというと、この分野で一番大きい競合相手が、日本にはたくさんありますので。競合メーカーのホーム・マーケットなので、なかなかビジネスを広げられなかったところはあります。

 それに加え、日本的な考えとInfineon社の本国であるドイツ的な考えの違いが、ビジネス展開を難しくしていました。ドイツ的な考え方は、スタンダード品質にあります。スタンダード品にすると半導体は安くなりますので、顧客はそこに自分の付加価値を載せた製品を売るというものです。一方、日系メーカーはカスタム製品に偏る傾向が強いですね。

 ですが、最近この傾向は変わりつつあります。BCPの面や、重電系を中心に海外での受注を増やしていることが背景にあります。そうなると、日本的な考えよりも、ドイツ的な考えの方が合うはずです。

 加えて、海外に行くほど我々の経験を顧客に役立てていただけるケースが増えるでしょう。日本から外に出ると、規格や設備の考え方などが違いますからね。例えば、太陽電池システムの場合、マイクロインバータを使うか、メガインバータを使うか、選択が異なります。Infineon社は海外経験が豊富ですので、「この国はマイクロインバータが合いますよ」とか提案ができます。

 エネルギー関連だと、日系メーカーが海外メーカーとジョイント・ベンチャーを組むことが多々あります。我々は海外ネットワークが充実しているので、手を組む海外メーカーがInfineon社と協力したというケースはままあるでしょう。日系メーカーが我々と日本で付き合っておくと、ジョイント・ベンチャーを進める際に有利に働く可能性があります。我々が今、一番強化しようとしているのは、日本の顧客が海外でビジネスを展開する際に日本からサポートできるようにすることです。