マキシム・ジャパン 代表取締役社長の滝口修氏に聞く、Maxim社から見た日本市場の魅力(前編はこちら)。後編では、事業強化を図る自動車や産業機器、医療機器の分野について、事業の状況をより具体的に聞いた。(聞き手は、大久保 聡=日経エレクトロニクス編集長)

――日本において、産業機器分野で有望なものは何でしょうか。

 やはりスマートグリッド関連ですね。我々は少し前から日本で積極的に活動してきたこともあり、最近成果が出てきました。経済産業省のホーム・エリア・ネットワークの協議会において、HEMSにおける通信の推奨テクノロジーとしG3-PLCが選ばれました。G3-PLCは、当社が規格化を主導した電力線通信技術です。Maxim社は後発だとみられていた分野でも、少しずつ入ってきています。

――自動車や医療機器、産業機器向けの製品の伸びはどの程度になるとお考えですか。

 民生機器や携帯電話機のような、急速な市場拡大はないと思っています。私は前職までは約20年間、デジタル家電関連のビジネスに携わってきましたので、この分野のことはよく分かっています。デジタル家電の場合、ビジネスを始めて2年間くらいで半導体製品の売り上げが100億円を超えるケースは何回かありました。ただ、それから2年もたつと売り上げはゼロですね。

 私は、このようなビジネスを「ローラーコースター・ビジネス」と呼んでいます。ビジネスを取っては落として、また取っては落としてというような繰り返し。1回のビジネスで取り扱われる数量がものすごく多いので、魅力に感じた他社がいろいろと参入してくる。価格勝負となり、結果として自らが値段を壊してしまい、売ってはいけない値段でもビジネスを進めねばならなくなる世界だと私は思っています。

 それに対して、自動車や医療機器、産業機器、さらには一眼レフ・カメラなどの一部民生機器は、積分型ビジネスなんですね。一つひとつのビジネスを進めるには、あたかもワイングラスを積むような苦労が必要です。ですが、積んだものが翌日全部、崩れるかというとそんなことはありません。