日本市場において、自動車や産業機器、医療機器の分野の事業強化を打ち出している米Maxim Integrated Products社の日本法人マキシム・ジャパン。事業強化を打ち出した2年半前に比べると、かつては売り上げの数%しかなかった自動車向けの事業が20%超へ、産業機器分野でも数%から20%程度にまで着実に拡大してきたという。なぜ、これほどまでの成果に結びついたのか。そして、Maxim社は日本市場をどのように位置づけているのか。マキシム・ジャパン 代表取締役社長の滝口修氏に聞いた。(聞き手は、大久保 聡=日経エレクトロニクス編集長)

――日本市場において、自動車や産業機器、医療機器の分野への注力を打ち出している背景について教えてください。

滝口修氏
滝口修氏
マキシム・ジャパン
代表取締役社長

 3分野とも背景はほぼ同じですので、一番典型的な分野であり、かつ我々にとって最もプライオリティーが高い自動車分野向け事業を例に説明しましょう。

 まず、日本の企業や産業の優位性を世界で保てる分野ということが挙がります。やはり“ものづくり”の技術とか、日本人は品質に対する非常に高い意識を持っています。それから、これは私が思うことなのですが、自動車というものは必ずしも「安いから買う」という商品ではないことですね。軽自動車でも、高級車でも買い物に行くにはいずれも問題ないでしょう。しかし、だからといって誰しも軽自動車を買うわけではありません。

 これは医療機器の分野でも同じです。新興国で製造したような安価なノンブランド品が出てきたからといって、誰もがそうした製品に飛びつくという世界ではありません。産業機器でも、同じようなことが多々あります。こうした分野では我々の半導体製品の特徴が生かせるはずです。

 自動車や産業機器、医療機器では、我々の技術力をまず評価していただける土壌があります。新技術を受け入れてもらいやすいので、我々にとって有利です。こうした分野は安全性を重視し、コストを掛けてでも安全性を確保しなければなりません。

 自動車や産業機器、医療機器などは、必要な技術に機械的な部分があります。機械技術、アナログ技術、デジタル技術の集合体といえます。デジタル技術だけでは簡単に模倣されてしまいますが、機械的な要素が入っているとそう簡単ではありません。機械的な要素があれば、そこには高いレベルのアナログ技術が求められますので、当社にとって活躍できる場といえます。