フェアチャイルドセミコンダクタージャパン 代表取締役社長の雨宮隆久氏は、新技術や新製品の採用に積極的な顧客が重要なってくると語る(前編はこちら)。同社がティーチャー・カスタマーと呼ぶ先導的な顧客を発掘していくには、同社自身も変わっていく必要があるという。製品開発における顧客の悩みをくみ取れるような、もっと広い視野で顧客と開発を進める姿勢の重要性を説く。(聞き手は、大久保 聡=日経エレクトロニクス編集長)

――コスト重視や実績重視の顧客が増えることで、御社にはどのような影響がありますか。

 電子部品の売り手である我々も注意が必要です。お客さんからコストや実績を追い求められるようになると、そうした要求に答えるような視点になってしまいます。ですので、そうならないように2年くらいかけて「ソリューション・セリング」という社内教育をしています。コストの話が大切なのは変わらないのですが、顧客が何をしたくて、本当に困っていることは何なのかを、会話の中からつかみとれるようにトレーニングしています。

 顧客は本来、最終的に所望のパフォーマンスを発揮しつつ、システムのコストを低く抑え、製品競争力を高めたいと考えているはずです。そうであれば、部品レベルを超えて、もっと広い視野で顧客と話をしていかねばなりません。

 個々のコストに目が行ってしまうことは、弊社内でもよくあるんです。例えばSPMのコストをもっと競争力のあるものにする場合を考えてみましょう。社内には、SPMのパッケージを開発している部隊がいます。SPMに搭載するICを開発している部隊もいます。ICを安くしようとすると、ICを一生懸命にシュリンクしてチップ寸法を小さくするのが常套手段です。パッケージを安くしようとすると、ワイヤを金線から銅線に変更したりすることを考えるでしょう。でも、ICを小さくしすぎると、パッドの寸法も小さくしなければなりません。そうなると、ICを実装する難易度が高まってしまう。ICは小さくなったので低コスト化できたとしても、実装コストが高まることでトータルでは逆に高コストになる危険性もあります。ICのランドをちょっと大きくすれば、チップのコストはちょっと上がるかもしれないけど、実装コストを低く抑えられ、全体的には低コストにできるはずです。