米Linear Technology社の日本法人トップである、リニアテクノロジー 代表取締役の望月靖志氏に聞いた日本市場の状況(前編はこちら)。後編では、新興国のキャッチアップによって、先進技術の導入に積極的になってきた同社の顧客の姿を紹介してもらった。(聞き手は、大久保 聡=日経エレクトロニクス編集長)

――新技術導入に積極的なのは、どのような業界の顧客ですか?

 例えば、産業計測分野とか、医療機器分野など、当社が注力してきた分野の顧客です。こうした分野の顧客は、日本だけでなく世界的にも強者といえる企業なのですが、中国などの企業の技術的なキャッチアップをかなり気にしています。「まだまだ大丈夫」と思っていたところが、今のままでは今後2年はアドバンテージが持つが、3年後は危ないというような認識が強まってきました。このような状況に陥らないように、中国メーカーよりも小さく、より高機能の製品を市場投入しようと躍起になっています。

 製品の寸法はより小さくなるので、集積して機能を増やすことになります。そうなると電流を今まで以上に流すことになります。そうすると熱が出る。寸法を小さくすることと、熱の発生を抑えること、この2点の問題解決を顧客は当社に求めている状況です。ここ1年で、このような依頼がものすごく増えています。これらの問題を解決できるアナログ半導体は、先ほどお話しました約4兆円の市場のうち、1/3程度。そこが付加価値の高いアナログ半導体市場といえます。高付加価値のアナログ半導体製品を展開する当社には今、追い風が吹いています。

 私はここ2週間で会った顧客は7社ぐらいあって、このうち6社が技術的なチャレンジとして「寸法と熱」を挙げていました。顧客はこうも言いました。「日本メーカーが中国メーカーと同じようなものを作っても、世界のお客さんは日本メーカーのものが安いからという理由で購入する人は1人もいない」と。安いものが欲しいのであれば中国、台湾、韓国メーカーの製品で十分なのです。日本メーカーの産業計測機器などを選ぶ理由は、小型で機能が優れることや、信頼性が高いことに尽きます。こうした特徴を備えた機器は、多少値段が高くても売れるのです。

 円高の問題や、高まり続ける中国メーカーの存在感の中で、「日本企業は不幸だ」と言われていますが、私は窮地にいるからこそ経営戦略を見直して強い部分への投資を決断するチャンスが来ていると思います。