家庭用ゲームとスマホ用ゲームの垣根が次第に消滅する
――ファーストパーティーとして出している自社タイトルは13本になりましたが、人気の傾向に何か変化はありましたか。
田中氏:ご存じのように、今はカードゲームのブームが来ています。でも、似たようなことは家庭用ゲーム機でもあったと思います。『ドラゴンクエスト』がはやればRPGがどんどん出てくるといったことがありました。それを繰り返しながら、各ジャンルを代表するようなタイトルが生まれるんだと思います。ブームが去ったからといって、そのジャンルが消滅するわけではなく、根付いていくものなんでしょうね。
確かに似たようなカードゲームが多いという人はいますが、それは端から見ている人ではないですか。実際に遊んでいるユーザー側からすると、違うものだと認識しているはずです。だからこそ、これだけ多種多様なカードゲームが受け入れられているのです。
――ラインアップについては、大手ゲーム会社のタイトルも充実してきましたよね。
田中氏:2011年ごろから、もはや家庭用ゲーム機の会社とかソーシャルゲームの会社といった区分けが意味をなさなくなりつつあります。例えばKONAMIさんは「GREE」で『ドラゴンコレクション』を提供していますが、同社のソーシャルゲームの売り上げが家庭用ゲームソフトの売り上げを上回ったと大きな話題になりました。『ガンダムマスターズ』を提供しているバンダイナムコゲームスさんも、収益に占めるモバイルゲームの割合が急激に伸びていると思います。コーエーテクモゲームスさんもそうした傾向にありますよね。
また、3月21日にはソーシャルゲームのグローバル展開を強化するため、グリーはレベルファイブさんと包括的な業務提携を結びました。こうした動きが活発になり、今や家庭用ゲーム業界を代表してきたゲームメーカーのいくつかは、ソーシャルゲーム業界も代表するような企業となりつつあります。
スマートフォンの高性能化が進んでいる現状において、ハードウエアのスペック差は家庭用ゲーム機と縮まってきています。携帯電話やモバイルで遊ぶゲームはHTMLの静止画で、家庭用ゲームは3Dで、といった垣根自体もこの1年間で完全に消滅するでしょう。ぱっと見ただけでは、それがスマートフォンのゲームなのか、家庭用ゲーム機のゲームなのか見分けがつかないようなタイトルも今年は出てくると思います。
――家庭用ゲーム機とスマートフォンのように、そこで提供されるゲームの垣根が曖昧になってくれば、グリー内部の開発体制やゲームの作り方も大きく変わってくるのではありませんか。
田中氏:家庭用ゲーム業界には、ストーリー展開やビジュアルによってゲームをより魅力的に見せるノウハウがあります。この点については、我々がインターネット分野で培ってきたものとは全く異なる素晴らしいものです。一方、コミュニケーションしながらだったり、データを配信しながら面白いゲームに仕立てるといった部分は、インターネットから出発している企業が持っているノウハウがあります。
これらはどちらが重要かということではなく、当然、両方ある方が面白いに決まっています。ですから、家庭用ゲーム業界から来た人はビジュアルや音楽、ストーリー作りに長けているので、その上でソーシャルやインターネット、コミュニケーションを取り込みながら開発していますし、逆にインターネット寄りの世界から入ってきた人は家庭用ゲームの演出やストーリーを学んでいる状況です。それぞれの良い点をミックスするので、両面において面白いゲームが作れるように変わりつつあります。
――サードパーティーのタイトルはどうですか。
田中氏:今年、カプコンさんやコーエーテクモゲームスさんが新しくリリースするタイトルなどは、3D風のものになると伺っています。そうしたタイトルが出てくれば、家庭用ゲーム機のゲームとスマートフォンでやるようなゲームとの垣根が消滅するといったことが、よりはっきり理解できると思います。
――そうなると、ソーシャルゲームをリードしてきたファーストパーティーとしての命題はなんですか。
田中氏:サードパーティーに対しては、やはりプラットフォームの普及を進めることが一番です。グリー自体はプラットフォームとファーストパーティーの2つを手がけており、その両方をミックスすることでイノベーションを起こしやすい立場にありますから、ソーシャルゲームの新しい楽しみ方を発見することが求められています。
それにはゲームだけにとどまらず、さまざまなアプリケーションの可能性を模索したいと思っています。いろいろな企業の方と話しながら、多くのことをやっていく中において、新しいモデルや仕組みの発見があったりするので、取り組み続ける課題といえます。