海外の1人当たりの売り上げは日本の10分の1以下

――今までは、海外展開をやりますといっても、まだユーザーがいないということもありましたが、2012年はしっかりとユーザーを獲得していくことが求められます。

守安氏:会員数も大切ですが、まずはアクティブユーザー数と「モバコイン(Mobage内の仮想通貨)」の流通が肝心です。プラットフォームの整備や提携先との関係を含め、海外展開の形がだいぶできてきました。

 ただ、日本とその他の地域とで何が大きく違うかといえば、やはりARPUなんです。ソーシャルゲームを提供して、それなりに会員は集まるのですが、遊び続けて、さらにお金を使ってもらうということになると、日本と比べてARPUは一ケタ違ってきます。海外の方が10倍以上低いのです。日本が異常に高いのか、あるいは海外が異常に低いのかということはあるにせよ、その差が大きいのは問題です。

 ですから海外展開における2012年の課題としては、ソーシャルゲームのKPI(重要業績評価指標)、例えばリターンレートやARPUといったものを、国内で提供しているものにいかに近づけるかというのが最も重要だと考えています。それをDeNAがきっちりと示すことによって、サードパーティーの本気度も変わってきます。その意味でも、大ヒットと呼べるようなタイトルを、いつ、どこの地域で出せるかが今期の最大のテーマでしょう。

――大ヒットの基準はどこに置いているのですか。パッケージソフトは「世界で数百万本」とか発表されるのですが、ソーシャルゲームはタイトル別の売り上げなどが出てきませんから、ヒットと言われても外からは判断がつきません。

「韓国でのビジネスは2012年が勝負になる」と話す守安氏

守安氏:確かに分かりにくいですよね。もちろん内部では「このタイトルはヒットしている」とか数字で判断できますが、個別タイトルの売り上げやARPUなどは外部には公表していないですから。

 プラットフォーム全体で流通しているモバコインの金額は去年から出し始めました。それを見れば、プラットフォームの成長を判断することができます。ただ、個別のタイトルの細かな数字はあまり公開したくないですね。

――プラットフォーム拠点についてもまだまだ整備しないといけないと思いますが、海外の開発拠点についてもどんどん増やしていくのですか。

守安氏:現時点であと何カ所設けるというように、具体的なことが決まっているわけではありませんが、それぞれの拠点で開発した方がメリットは出てくると思いますので、その役割を考えながら、拠点数や現地のスタッフ数をこれからも増やしていくつもりです。

――新興国、特にアジア地域での展開はどのような計画ですか。

守安氏:インドネシア、タイ、ベトナムといった東南アジアは人口も多いので、将来的には大きなマーケットになると注目しているのですが、3Gネットワークの浸透率や速度といった通信環境の整備にまだ時間がかかりそうです。今はリサーチしながら、どういうタイミングで入っていくか検討している段階ですね。インドでの展開についても、中国に対して数年後になるでしょう。

 韓国と中国については違う役割でとらえています。韓国はスマートフォンや3Gの浸透が早く、既にゲーム産業が発展しているので、2012年が勝負になると思います。今年中にきっちりビジネスを軌道に乗せないと、どんどん難しくなるでしょう。それに対して中国は収益化については来年以降ですが、早めに参入してコネクションを作っておかないと、後から入るのは厳しくなるだろうという認識です。長期的には中国のビジネスの方が大きくなると思います。

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