他社とのコラボタイトルに注目
――国内外で、パッケージビジネスの好調さに違いはありましたか?
襟川氏:国内は非常に好調でした。米国は予定通りの結果でした。欧州は経済が不安定だったこともあり、いまひとつの成績でした。やはり欧州は、私たちがターゲットとしている20歳~30歳代の失業率が高くなっていて、購買力が低下してきている、という感覚です。
一方で、台湾、香港などの東南アジアは、非常に良い成績でした。『真・三國無双』シリーズなどが支持されていて、経済力も上がってきていることが購買力に通じて、 ゲームの消費活動が活発になっているのだと思います。
――欧米で売れるタイトル、東南アジアで売れるタイトルに違いがありますか。
襟川氏:ずいぶん違いがありますね。欧米では旧テクモのゲームタイトル、『Dead or Alive』や『NINJA GAIDEN』が人気ですし、東南アジアでは旧コーエータイトルという区分けです。第4四半期でも期待できる大型タイトルが出てきますので、その成績は非常に楽しみです。
特に、他社とのコラボレーションで開発したタイトルに注目です。3月1日には、バンダイナムコゲームスとのコラボタイトル『ワンピース 海賊無双』(発売はバンダイナムコゲームス)が出ましたし、3月17日には『ポケモン+ノブナガの野望』(発売 はポケモン)を発売しました。
自社タイトルでは、ワールドワイド向けの『NINJA GAIDEN 3』が3月22日に発売になりました。こうみると、3月に大型タイトルが集中してますから、なんだ去年と変わらないじゃないか、と言われるかもしれませんね(笑)。
いずれにせよ、四半期ごとに黒字化を目指し、それを達成できましたので、2012年度もそうした形にしたいと考えています。
――これらのタイトルの中で、一番力強いのはどのタイトルでしたか。
襟川氏:そうですね。ここまでの中でいうと、『ワンピース 海賊無双』でしょうか。初回受注の段階で50万本は達成しており、3月末の時点で94万本(アジア地域含む)を超えたとバンダイナムコゲームスさんより伺っています。バンダイナムコゲームスさんとは、ガンダムシリーズなどでも非常に良好な関係を築けていますから、これからの展開にも期待してください。
――『ポケモン+ノブナガの野望』は新しいコラボレーションの形ですよね。
襟川氏:そうですね。今まで『信長の野望』はシミュレーションゲームとしてスタートして、その後オンライン化して、MMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)というジャンルで、戦国時代を再現しました。その延長線上にソーシャルゲームとして、『100万人の信長』も実現しています。
これまではジャンルを広げる方向のビジネス展開だったのですが、今回は原点に戻って、シミュレーションゲームとしました。その狙いは、新しいシミュレーションゲームのファンを作ることです。『ポケモン』が好きな子供から大人まで非常に幅広いファン層に向けて、シミュレーションゲームの楽しみを提供したかったのです。ポケモンファンだった人からすると、たぶん新鮮な面白さが得られるのではないかと思っています。
ポケモンの石原恒和社長と話をして、プロジェクトがスタートしたのが3年前でした。そのときには、ニンテンドー3DSの影も形もなかったので、ニンテンドーDS上で稼働させることにしました。
――開発にずいぶん時間がかかったのですね。
襟川氏:初心者の子供でも楽しめるようにしつつ、コアなシミュレーションゲームファンからも飽きられないように、“やりこみ要素”を作り込んだのが、時間がかかった理由です。
『ポケモン』というゲームは、本編が終わってからも、自分のポケモンをずっと育てるという面白さがゲームの特質です。ですから、本編終了後も遊び続けられる“やりこみ要素”を大事に作ったということです。
ダウンロード型のゲームタイトルが徐々に増えている
――4月20日発売予定の『三國志12』ですが、三国志系ゲームが他社からいろいろ出てくると、機能面で差別化が難しくなってくるのではないでしょうか。
襟川氏:今回も新しいことにチャレンジしています。例えば、『秘策』という武将特有の技を、戦場でダイナミックに使える機能を増やしたことと、グラフィカル的に分かりやすいインターフェースに変更しました。初めて『三國志』をプレイする人でもすぐに遊べるように気をつけました。
それから、たくさんの方々が楽しんでいただけるように、「オンライン対戦モード」を作りました。最初のパッケージには入れられなかったのですが、次のアップデートでは無料で「オンライン対戦」を遊べるようにします。3月に発売予定でしたが、その品質向上作業のために、若干発売時期がずれてしまったのですが。
――そのオンライン対戦というのは、従来のオンラインゲーム『三國志Online』との違いがあるのでしょうか。
襟川氏:いままでのオンラインゲームはMMORPGでした。今度の『12』はシミュレーションバトルをオンラインで対戦できるようにしています。従来のシミュレーションファン向けに、新しい楽しみを増やすことができました。
――パッケージタイトルに対して、追加アイテムや追加ストーリーなどのダウンロード型販売が増えてきましたね。
襟川氏:おっしゃるように、ダウンロードコンテンツが年々増えてきました。経営上は非常に大きなウエイトを占めるようになり、決算の中では「ソフトビジネス」という科目の中に入れて、報告しています。お客様にとっては、有料と無料のダウンロードコンテンツを選んでいただけるようにしていますが、最近は有料のダウンロードコンテンツのダウンロード数、売り上げが伸びています。
ソニー・コンピュータエンタテインメントさんもPSN(プレイステーション・ネットワーク)をSEN(ソニー・エンターテインメントネットワーク)と統合して強化するようですし、任天堂さんもWiiやWii U向けにネットワーク課金も始められるということです。我々もそうしたダウンロード型ビジネスを強化したいと思っています。