2010年にいち早く、経営の舵をソーシャルゲームに切り、大手ゲームパブリッシャーのソーシャルゲームへのシフトを先導したともいえるコナミデジタルエンタテインメント。同社・田中富美明社長に、ソーシャルゲームやその他のプラットフォーム向けゲームの現状や今後について聞いた。
(聞き手/秦 和俊、写真/稲垣純也)
――2011年はどのような年でしたか?
田中富美明氏(以下、田中氏):変化し続けることの大切さを認識した年でした。
従来のゲーム業界は、新しいハードウエアが登場して、新しい表現が可能になり、そのプラットフォームに対してゲーム性のイノベーションが起きるという、提供する側(メーカー側)の変化でした。
しかし、今はソーシャルゲームの時代。遊ばれているユーザーの皆さんの変化を見ながら、ゲームを変化させていくことが基本となりました。変化の起点が提供側ではなく、ユーザー側に移ったのです。ユーザーから起こる小刻みな変化に対応していくことの重要性を、改めて認識しました。
また、ソーシャルゲームという大きなうねりに、ただ乗っていればよいのではなく、さらに次をめがけて変化し続けていかないと、お客様からもすぐ飽きられてしまう。『ドラゴンコレクション』や『プロ野球ドリームナイン』がヒットしていますが、お客様の動向を常に見ながら、対応していくことが重要です。
制作リソースはソーシャルゲームにシフト
――ソーシャルゲームの時代になると制作体制も大きく変わりますね。
田中氏:据え置き型機向けの、いわゆる“トリプルA”のタイトルは、大きなチーム体制が必要ですが、ソーシャルゲームの場合は数名で立ち上げることができるので、非常に機動力があります。
パッケージのタイトルの場合は、ゲームができあがれば終わり、後はマーケッターやプロモーターが仕事を引き継いでいきます。
一方、ソーシャルゲームやオンラインゲームは、できあがったところがスタート地点。日々の運営が始まり、そこに人材を張り付ける必要があります。
――運営という領域では、従来のパッケージ向けタイトルでも、ダウンロードコンテンツを追加で出していくようになりました。そのような運営とソーシャルゲームの運営では、考え方が違うものでしょうか。
田中氏:まったく考え方が違います。冒頭に申し上げたように、ものごとの起点がどこにあるかの違いです。提供側に起点があるのか、ユーザー側に起点があるのか。
そのような観点では、アミューズメント機の経験のある会社に強みがあると思っています。アミューズメント機の歴史は、常に100円の積み上げで、お客様に楽しんでもらえるものを生み出してきました。ソーシャルゲームでいうアイテム課金に似ているモデルです。
我々は、アミューズメント施設向けに「e-AMUSEMENT」というネットワークサービスを展開し、それぞれの機械でお客様がどのように遊ばれているかを、手元で情報として見ることができる仕組みを構築し、制作に生かしてきました。
ソーシャルゲームでも、ユーザーがどのような遷移を描きながら遊んだかまで把握することができます。そのデータ化、数値化により見えてくるユーザーの変化に、我々が合わせていくというのが、運営の基本となります。
――社内全体での制作リソースはソーシャルゲームにシフトさせているのでしょうか。それとも、ソーシャルゲームの制作リソースとして新たに採用されているのでしょうか。
田中氏:現段階では、内部のリソースを従来のパッケージ型からソーシャルゲームに大きくシフトさせている状況です。ただ、私たちはトリプルAタイトルにも力を入れていますので、バランス良く採用していきます。
――ソーシャルゲーム関連で、どれくらい人数を増やす考えですか?
田中氏:収益との兼ね合いもありますが、数百名単位で考えています。これから、もう一つ成長カーブを作っていくための課題として、海外マーケットが挙げられますから、基本的には米国や欧州など、海外でのリソースを増やしていく考えです。
――3月にハドソンと合併しました。何か影響はありますか。
田中氏:これまでもコナミグループの100%の子会社でしたが、別法人ということで、著作権の契約といった細かな部分では、スピーディーに進めるうえで限界がありました。合併しても「ハドソン」というブランドはしっかり残していきますが、法人としては1つになって、スピードアップすることができそうです。
ハドソンの制作リソースは、ソーシャルゲームやモバイルに積極的に投入していく考えです。