アジア展開はリサーチを経て、2012年に仕掛けていく
――ソーシャルゲームやスマートフォン戦略は「ビーライン」を中心に進めていくのですか。
辻本氏:当社は、飛躍的な拡大を続けるソーシャルゲーム市場において、「ビーラインブランド」を活用したライトユーザー層への訴求を図るとともに、「カプコンブランド」による家庭用ゲームとのシナジー効果の創出を目指す2つの戦略を推し進めています。
まず、ビーラインですが、2006年に買収したカナダの携帯電話向け開発会社コズミック・インフィニティー社をベースに展開しています。ちょうどスマートフォンが浸透し始めアプリによるソーシャルゲームが米国で普及した時期でした。
また、日本でもフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が顕著で、そうなれば市場はグローバルに広がる。カプコンの経営戦略上、非常に可能性があり、スマートフォン向けソーシャルゲームに特化したビジネスに取組むべき価値があると判断しました。
モバイル市場の主流がスマートフォンに切り替わりつつある現在、日本にも「スマートフォン」向け「ソーシャルゲーム」を開発し、「グローバル」に配信する組織が必要と考え、昨年4月にビーライン・インタラクティブ・ジャパンを設立しました。
一方で、「カプコンブランド」では、カプコンの人気タイトルを活用したタイトルをGreeやMobage向けに積極的に配信を行っています。Gree向け第一弾タイトル『バイオハザード アウトブレイク サバイヴ』の登録会員数が100万人を突破したことに加え、2月から配信を開始したMobage向け『みんなと モンハン カードマスター』も早々に100万人を突破するなど堅調に推移しています。
――この分野では、グローバルというのは一つの大きなポイントになりますよね。
辻本氏:スマートフォンは、想像を絶するスピードで拡大し続けています。しかもその範囲は全世界です。スマートフォン向けゲームはまずは無料でスタートして、後から課金していく「フリーミアム」が一般的です。世界規模で爆発的な速さで普及し、気軽にゲームを楽しむことができるプラットフォームですから、ビジネスの可能性はとても大きいと考えています。
――海外展開はどうなっていますか。
辻本氏:アジア圏ではパッケージ商品の海賊版が横行しているために、当社の今までのビジネスモデルはなじみにくい傾向があるので、PCオンラインゲームを検討しています。主力のPCオンライン『モンスターハンター フロンティア オンライン』は、台湾では2010年1月から遊戯新幹線(Game Flier International)と提携してサービスインしています。今後そのほかのアジア地域でもサービスを検討しており、アジアでの展開を強化していきます。
もう一つは、ソーシャルゲームによるアジアを含む新興国での展開です。いずれもこれまでの家庭用ゲームソフトでは取り込めなかったユーザーの獲得を目指しています。アジアに対しては、今のところ英語版を配信していて、着実に売り上げを伸長しています。
アジアは有望な市場なので、今後の展開をしっかり考える局面にさしかかっています。価格面や製品のバリエーションを考慮するとAndroid端末の普及が予想されるので、それを念頭に置いて検討していきます。我々はマルチプラットフォーム対応を基本戦略としていますので、もちろんiOSについても期待しています。
欧米市場では、“トリプルA”の大型タイトルがよく売れる傾向にあります。それを意識して、『ドラゴンズドグマ』(日本:2012年5月24日発売予定)のような、海外で人気のある「オープンワールド」のファンタジーゲームを開発しました。これは、欧米のユーザーに受け入れられるポイントを追求し、カプコンが満を持して発売するタイトルです。
『バイオハザード6』(2012年11月22日発売予定)も、欧米の“トリプルA”のタイトルと互角に戦えるようなクオリティだと自負しています。社内の限られたリソースを効率的に配置し当社の中核ビジネスとして家庭用ゲーム機への展開に力を入れています。
――アジア展開で、国別に優先順位を付けるとしたどうなりますか。
辻本氏:そこはまだリサーチ段階ですね。シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナム、インド、もちろん中国や台湾も台頭してきています。懸念されていた不正ダウンロードや海賊版の問題も、スマートフォンの普及により解決の糸口が見えてきました。
また、PCでもブラウザーゲームが受け入れられるなど、環境は常に変化しています。それらを踏まえて、各国のゲームの成長性について、もう一度見直す必要が出てきています。各市場の可能性については調査中です。
中国は、今や世界経済に影響を及ぼすほど成長しています。国としての方針を大きく転換するのは難しいと思うので、現在はやや距離を置いています。今は中国以外の周辺国をしっかりリサーチしようと考えています。人口も多く、コンテンツを受け入れる土壌ができていますから、ビジネス的な視点でとらえていく必要があるでしょう。従って、2012年はアジアに対して十分にリサーチし、仕掛けていく年になるでしょう。