全ゲームタイトルにソーシャルゲームの要素が入ってくる時代に

――ソーシャルゲームはカードバトルゲーム系をはじめ、似たゲームシステムが多いようです。同じような種類のゲームばかりになってしまい、その結果廃れてしまうという心配はありませんか?

すべてのゲームがソーシャルゲーム的な要素を持つようになると話す和田氏

和田氏:昨年、それが吹っ切れたと思っています。確かに一昨年まではそうだったんですよ。表面上違って見えるばかりで、中身に違いがないというゲームばかりになるのではないか、という不安感はありました。

 でも、今は違います。僕もソーシャルゲーム、ブラウザゲームをたくさんやっていますけれども、バリエーションがたくさん出てきました。ということは、少し前から仕込んで開発してきたのであって、それが花開いたのが2011年だったと思っています。

――今後は新しいソーシャルゲームの体験をユーザーに提供できるということでしょうか。

和田氏:2012年から、その裾野が広がるんじゃないでしょうか。今はソーシャルゲームと呼ばれているタイトルのくくりができていると思いますが、これから先は、すべてのゲームが“ソーシャル化”されると思います。現在、家庭用ゲームのハイエンドタイトルと呼ばれているものが、ソーシャル的な要素を持つようになっていく。それが2013年までに出てくると思います。

――つまり、今ある家庭用ゲーム機タイトルも、ソーシャルゲームになるということでしょうか。

和田氏:すべてのゲームがネットワーク要素を持つという言い方を、これまでしてきました。しかし、全ゲームがソーシャルゲームの要素を持つという言い方に変えた方が、今は伝わりやすいでしょうね。

 現にパッケージ販売しているゲームも、YouTubeやFacebookなどにゲーム本体から情報を出せるようになってきました。SNS上でバイラルが起き、つながった友達同士が一緒にプレイをしたり、競い合ったりして、新たなビジネスモデルがそこに発生するわけです。まるっきりソーシャルゲームですよ。

――プレイ映像などがネットで出回ることに、ネガティブな見方をする業界人もいると思いますが。

和田氏:これも、変わっていますよ。ネット上のプレイ映像などは、バイラルマーケティング的に、十分意味のあることだと思っています。確かにいろいろと慎重な見方をしなければなりませんが、結局、ネットに出ちゃいますよ。ゲーム本体の海賊版のような違法なものは防がなければなりませんが、映像などはユーザーが楽しみを広げる一環として考えるべきでしょう。

 スクウェア・エニックスの開発部門も、ようやくそうした取り組みに前向きに動き出しました。どうせネットに出てしまうなら、それをうまく活用する方法を考えるようになってきました。本当に楽しみたいユーザーなら、そうした“ネタばれ”ムービーは見ないという選択肢があるわけですから。見る見ないの選択権は、ユーザーに持ってもらえばいいわけです。

ファイナルファンタジー ブリゲイドが1カ月未満で100万人を突破

――それでは、スクウェア・エニックス社長として伺います。こうしたゲーム産業の新しい環境下、どのような体制で、どんなことに取り組んでいきますか?

和田氏:経営側が開発部門の中に、どんどん入り込んで、直接、話をするようになりました。その成果が昨年ぐらいからぼちぼち出始めました。まずパッケージソフトは、すべての主力タイトルでPDLC(追加ダウンロード)を実装しています。これは世界中のどのタイトルでも同じです。

 それから、バイラルマーケティングに対しても、Facebookに情報を送るための機能を実装し始めています。『ファイナルファンタジーXIII-2』では、Facebookに直結したインターフェースを実装しました。

 ソーシャルゲームやブラウザゲームという分野では、『戦国IXA(イクサ)』がおかげさまで、毎月非常に伸びていて、現在90万人の会員となりました。WebMoney Awardの2011年グランプリなどもいただきました。

 加えて、2011年12月からサービスを開始した『モンスタードラゴン』もスタートダッシュの調子はいいのですが、内容がちょっとコアゲーマーによりすぎかな、という評価がありました。なので、2012年2月から3月にかけて、パッチを当てながら、内容を改変していきます。ゲームを世の中に送り出してから、改変していくというカルチャーも、この1年ぐらいで開発現場に根付いたものです。

 それと、フィーチャーフォンやスマートフォン向けのソーシャルゲームでは、1月6日にMobageでサービスインした『ファイナルファンタジー ブリゲイド』が、非常に好調です。スタート後、1カ月満たない段階で、会員数が100万人を突破し、現在も順調に伸びています。こうした手ごたえが出てきましたね。

『ファイナルファンタジーXIII-2』
Facebookへの投稿がゲーム内のメニューから選べるようになっている。(C)2011 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA
『戦国IXA(イクサ)』
Yahooとの共同事業の第1弾。YahooIDを持つユーザー向けのブラウザゲームで、大名の配下になって戦国時代を生き抜く。(C)2010, 2011 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
『モンスタードラゴン』
Yahooゲーム向け第2弾のブラウザゲーム。モンスターカードをそろえながら、敵勢力を攻略する。(C)2011 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
『ファイナルファンタジー ブリゲイド』
Mobage向けソーシャルゲーム。仲間とクエストをクリアするロールプレイングゲームになっている。(C)SQUARE ENIX CO., LTD. (C)DeNA Co., Ltd.

『ドラクエX』や『FFXIV』などのフランチャイズが足並みそろう