職務発明の対価

(a)日本の場合
 日本特許法では、契約等で職務発明について特許を受ける権利などの権利を会社に承継させた場合、従業員に対して相当な対価を支払う義務が会社に生じると規定されています。ただし、その対価は明確に規定されておらず、以下のような抽象的表現にとどめています。

職務発明の対価について定める場合には、会社と従業員の間で行われる協議の状況等を考慮して、対価を支払うことが不合理と認められるものであってはならない。

対価についての定めがない場合または不合理と認められる場合には、会社が受けるべき利益、会社側の負担、貢献および従業員の待遇等を考慮して定めなければならない。

日本特許法第35条

(b)中国の場合
 中国特許法では、職務発明について特許権を取得した場合、職務発明を行った従業員に会社が奨励および報酬を与えるべきと明記されています(中国特許法第16条)。さらに、職務発明の対価については、以下のように詳細に規定されています。

特許権が付与された単位は、発明者、考案者または創作者と特許法第16条に規定する奨励の方法と金額について約定しておらず、かつ法に従って制定した規定でも定めていない場合は、特許権公告日から3カ月以内に発明者、考案者または創作者に奨励金を支払わなければならない。特許1件当たりの奨励金は3000元を下回ってはならず、実用新案または意匠1件当たりの奨励金は1000元を下回ってはならない。
中国特許法実施細則第77条


特許権が付与された単位は、特許法第16条に規定する報酬の方法と金額について発明者、考案者または創作者と約定しておらず、かつ法に従って制定した規定でも定めていない場合は、特許権の存続期限内において発明創造が実施された後、毎年、当該特許または実用新案の実施により得られた営業利益の中から2%を下回らない金額、もしくは当該意匠実施により得られた営業利益の中から0.2%を下回らない金額を報酬として発明者、考案者または創作者に支払い、または上述の比率を参照して発明者、考案者または創作者に一括で報酬を支払わなければならない。特許権が付与され単位がその他の単位または個人にその特許の実施を許諾した場合、取得した使用許諾料の10%を下回らない金額を報酬として発明者、考案者または創作者に支払わなければならない
中国特許法実施細則第78条