クルマ 自動車の最新技術を追う
 

最終回:一つの区切り(下)

高野 敦=日経ものづくり
2012/05/24 00:00
出典:日経ものづくり、2009年3月号 、pp.182~183 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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【前回より続く】

このままでは渡せない

 仙台での試作車の“試乗会”を通じて決意を新たにしていた栃木工場のメンバーは,宮川だけではない。清田勝と宮田光雄も,自分たちがこれから造るクルマがいかに規格外であるかということをあらためて実感していた。清田と宮田はボディの担当である。清田が製造(溶接)工程を,宮田が製造品質を管理する。

 清田は,2004年から開発に携わってきた。ただし,当初は量産試作部門の担当者としての参加である。量産試作は,設計と量産工場のつなぎ役。量産工場の視点から造りやすさやコストを検証するのが役目だ。

 そうした観点からGT-Rを見た場合,水野やボディ設計担当の鈴木信男が口にする要求は,清田にとって信じられないものだった。何しろ,ほとんどの重要部分に±1.0mmや±0.5mmといった精度を求めているほか,剛性を高めるために溶接点数もやたらと多い。これほどまでに造るのが難しいクルマを,そのままの形で量産工場に引き渡すわけにはいかなかった。

 だが,最終的には清田の方が折れることが多かった。要求の一つひとつに確かな目的があったからだ。それは,走行試験を見ているだけで十分に感じられた。自分が量産工場を説得しよう。清田はこう考えていた。

自身が引き継ぐことに

清田 勝
清田 勝
日産自動車栃木工場第一製造部車体課課長

 ところが,運命のいたずらが起きる。2006年春,清田は量産試作部門がある座間事業所から栃木工場への異動を命じられたのだ。異動先で与えられた業務は「GT-Rのボディ製造」。そこで清田は課長として指揮を執ることになる。清田は覚悟を決めた。

 問題は,部下の説得だ。そんな清田にとって,水野が企画した“試乗会”は渡りに船だった。清田は,率先して部下を試作車に乗せていく。おれたちはこれから,こんなにすごいクルマを造るんだ。それは,言葉よりも何よりも説得力のある体験だった。

宮川和明
宮川和明
日産自動車栃木工場第一製造部第一組立 課係長

 一方,品質管理を担当する宮田は,品質を確認するための手段を確立する必要性を強く感じていた。水野がGT-Rで狙っている性能は,とにかく規格外。既存の品質規格など通用しない。このままでは,清田たちが設計の要求通りのボディを製造できたとしても,その品質を確認するすべがない。品質規格を再設定するとともに,検査システムを整備する必要があった。

清田 勝
宮田光雄 
日産自動車栃木工場品質保証部第二品質 保証課専門係長

 そうした中で生まれたものの一つが,加振機を用いたボディの検査システムだ。このシステムによって,隣り合う部品同士のすき間の数値をインラインで計測できる。これを使えば,宮川が率いる組立工程に,自信を持ってボディを引き渡せるのだ。

分かっちゃうんですか?

 “試乗会”から約1年後の2007年7月,同年12月の発売まで半年を切っていたにもかかわらず,まだ決まっていないことが一つだけ残されていた。それは,クルマを組み立てた後の最終的な品質保証の体制である。

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