そこで必要となるのが、各部品の特性のバラつきを統計的に考えること。これによって、特性を調整しなくてはならない範囲が狭まり、固定部品だけで回路を組むことが可能になる。

 ただし、この方法を導入するには、複数の部品の公差を組み合わせた場合に、回路全体での特性がどのようにバラつくのかを計算することが必要になる。詳しくは後述するが、寸法公差のように、長さや距離といった同じ単位の公差を合成するのではなく、電圧や電流、抵抗といったさまざまな単位を合成することに、電子回路の公差設計の難しさがある。

変化する公差範囲

 もう1つ、冒頭でも述べたが、電子部品の場合は部品の特性や公差の値そのものを設計者が調整することはできない。例えば抵抗やコンデンサには標準数列というものがあり、抵抗値などの特性値とその許容差が決められている。市販されている部品の仕様(ラインアップ)は基本的に、標準数列に従って設定されている。その代表例が「JIS C 5063:抵抗器及びコンデンサの標準数列」だ()。

表●JIS C 5063の標準数列
表●JIS C 5063の標準数列

 JIS C 5063におけるE3系列では許容差は40%、E12系列では10%、E24系列では5%と決められている。特性値の間隔は、10、15、22、33といった具合に数値が大きくなるほど広がる。許容差が特性値に対する百分率で定義されているので、これらの数値の間をちょうど、補完する形になる(図2)。

 つまり、同じ系列(許容差)の部品であっても、10±2と33±6.6というように、公差の大きさは異なる。電子回路で各部品の公差を合成する際には、この値を用いて計算していくことになる。

図2●E6系列の範囲
図2●E6系列の範囲
許容差は±20%なので、数値が大きくなるほど許容範囲は広がる。
「第2回:どうやって特性の公差を合成するか」