今のところ、4輪車で現実的に一番少ない気筒数は2気筒だ。 振動を減らすことは、3気筒よりさらに難しいが、各社それぞれに対策をした。 既に商品化したイタリアFiat社は1軸のバランスシャフトを使った。 オーストリアAVL社はレンジエクステンダの利点を生かし、不等間隔爆発を選択した。 YGKはフライホイールを大きくしても応答性が下がらない技術を開発した。

図1 イタリアFiat社の「500ツインエア」
図1 イタリアFiat社の「500ツインエア」
イタリア市場では2010年9月から販売していた。

 3気筒の下にはさらに2気筒がある。間違いなく燃費は良くなるのだが、振動が増えることも、また間違いない。ユーザーの反応を考えると、2気筒という選択をするのは勇気のいる判断だ。

 その判断を既にしてしまったのが イタリアFiat社。ことし3月、フィアット グループ オートモービルズ ジャパンは「500ツインエア」を日本で発売した(図1)。直列2気筒、ボア80.5×ストローク86.0mm、排気量875mLのターボ過給エンジンを積む。今、日本に正規輸入している唯一の2気筒車だ。もちろん国産車にはない。

 圧縮比はポート噴射の過給エンジンとしては高い10.0:1。ヘッドは各気筒2弁で、カムと油圧を併用した可変弁開閉機構「MultiAir」を採用した1)。最大トルクは154N・m/1900rpm、最高出力は63kW/5500rpm。

参考文献
1)鶴原「燃焼改善や可変圧縮比を実現、バルブが燃費を左右する」『日経Automotive Technology』2011年3月号,pp.66-71.

 10・15モード燃費は、今までの4気筒車より30%向上、出力を23%増やした。4気筒車は排気量が1.2Lの気筒あたり2弁、自然吸気である。ただし、こうした伸びの一部は排気量を減らして過給をしたこと、「MultiAir」やアイドリングストップの貢献も大きく、気筒数だけでは説明できない。

図2 直列2気筒、排気量875mLのエンジン
図2 直列2気筒、排気量875mLのエンジン
手前がバランスシャフトで、右端が駆動ギア。

 明らかに2気筒であるために実現したのは長さと質量の低減。出力が同じ程度の4気筒エンジンに比べ、クランク軸の部分で測った長さは23%短く、質量は10%軽い。

 クランク軸と平行の、やや高い位置にバランスシャフトがあり、クランク軸と同じ回転数で逆回転する(図2)。1次振動はまず上下に発生する。クランク軸のバランサでこれを打ち消すと、左右の成分が出てしまう。これをバランスシャフトで打ち消す。

 バランスシャフトを支える前後のベアリングの外側に大きなウエイトが2個ある。また、ベアリング同士を結ぶ中間の軸は断面を大きく切断して不釣り合い重りとし、ウエイトの役割を持たせているが、この部分の径は小さいので、補助的なものだろう。