日本と異なる例外適用対象

 これまでの説明を基に、日中両国における新規性喪失の例外適用対象の対比をにまとめました。両者を比較すると、日本特許法第30条の「(1)特許を受ける権利を有する者の意に反して新規性を喪失した発明」と、中国特許法第24条の「(c)他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏らした場合」は、ほぼ同じ内容の例外適用対象となっています。しかし、それ以外はかなり異なっています。

表●日中における新規性喪失の例外適用対象の対比

 具体的に見ると、まず中国では、発明者が自らの意思で試験の実施、刊行物への発表、電気通信回線を通じての発表、研究集会での発表、販売、配布、記者会見、テレビ・ラジオでの発表、博覧会以外の展示などを行ったことによる新規性喪失は、例外適用対象になりません。学術団体開催の研究集会での発表については、日本の学術団体は「中国の国務院関係主管部分または中国全国的学術団体」には該当しない可能性が高いので、新規性喪失例外の適用対象にはならないのです。

 さらに、日本政府などが開催する博覧会や国際博覧会についても「中国政府が認可した国際展覧会」に該当するとは限らないので、それらに出品することによる新規性喪失は中国で例外適用を受けられない可能性が高いと思われます。ただし、万国博覧会(愛知万博や上海万博など)は、国際博覧会条約に基づいて正式に博覧会事務局に登録または認可されたものなので、中国政府が認可した国際展覧会に該当すると考えられます。

 一方で、中国特許法第24条の「(a)中国政府が主催し、または認可した国際展覧会に初めて展示した場合」、および「(b)規定の学術会議または技術会議で初めて発表した場合」は、日本特許法第30条に規定された「特許を受ける権利を有する者の行為に起因」するものであれば、日本でも新規性喪失例外の適用対象になると考えられます。