2004年に7万5000台を超えて過去最高を更新。その後も,2005年に約9万台,2006年に約8万台と高水準を維持し,2007年には9万台を超えたとみられる─。日本の多関節型産業用ロボットの出荷台数が増えている。この傾向は多関節型に限ったことではなく,今,産業用ロボット全体の需要が高い水準で推移しているのだ。なぜここにきて伸びているのか。好景気だけでは片付けられない理由が,そこには隠れている。

図1●ロボット適用領域の拡大
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 最大の理由は,一部の限定的な用途でしか使えなかったロボットが,より広範な用途で使えるようになってきたこと(図1)。これまでロボットの適用が難しかった組立作業や一部の検査作業などに用途が急速に広がりつつある。

 川崎重工業汎用機カンパニーロボットビジネスセンター理事・センター長の小川耕司氏は「これまでのロボット活用は,比較的適用しやすい溶接,塗装,ワークや部品の搬送といった用途が主だった。組立現場にもロボットは存在したが,そのほとんどは部品などの搬送用で,組み立てるという作業そのものにロボットを利用する例は少なかった」と分析する。

 こうした状況変化のきっかけになったのが,ロボットの活用技術やセンシング技術の進歩,およびロボット自体の使い勝手の向上である。これを受けてロボット化を強力に牽引しているのが,ユーザー側のニーズの変化だ。具体的には,ロボットが競争力強化の切り札になると考えるユーザーが増えてきたことと,人材確保の難しさから自動化ニーズが再び高まってきたことが挙げられる。さらに,ロボットの価格が手ごろになってきたことも,こうした動きに拍車を掛けている(図2)。

図2●日本の多関節型産業用ロボットの出荷台数が伸びている背景
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