個々のコンバータは制御回路との通信機能を持っており、太陽電池の発電状況に従って特性を制御する。通信機能を利用してモジュールごとの発電状況を把握できるので、異常な太陽電池モジュールを簡便に見つけられる。また制御回路から各コンバータが制御できることを利用して、工事時など太陽電池の出力を止めたいときに、コンバータの出力を切断できる。これは安全性向上に寄与する。

 結晶系と呼ばれるタイプの太陽電池モジュールの出力電圧は30V前後である。この電圧であれば既に量産されているパワー半導体を使って安価かつ高効率のマイクロコンバータ回路を実現できる。

図9 マイクロインバータ方式の構成
太陽電池モジュールごとにコンバータとインバータを持つ。部品点数が多く複雑ではあるが、1台単位での設置が可能という利点がある。
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 ③ マイクロインバータ方式は、太陽電池モジュールごとに系統連系インバータを接続して系統に直接連系するものだ(図9)。マイクロインバータは、工事が簡単で、必要な容量の分だけ設置できる。そして、他のシステムでは太陽電池モジュールの直並列数に制約があるのに対して、マイクロインバータを用いると1台単位での追加設置ができる。回路の入力は直流30V程度という危険性の小さい低電圧であり、出力電圧は交流100V、交流200Vといった一般的な電圧のため、安全性の高い工事ができる。さらに、出力電圧が系統と同じであることから、電源ケーブルやブレーカーなど工事に必要な部材が豊富である。マイクロコンバータ方式と同様に太陽電池ごとにMPPT制御できるとともに、通信機能を持たせることでユニットごとの発電電力の把握や、不具合の自動検出などの機能を付加できる。

 マイクロインバータとマイクロコンバータは、太陽電池モジュール近傍に設置するため、屋根の上などのアクセスの難しいところに設置されるばかりでなく、温度変化も激しい劣悪な設置環境となる。また、大規模な発電システムになるほど、従来型やストリング型と比べて、多くの回路を使用することになる。従って長期信頼性の確保が必須である。システムの長期信頼性を確保するため、部品点数の削減や、個々の部品の信頼性向上、安定したアセンブリ技術の開発が必要である。

系統安定化技術に注目集まる

 最後に、パワー・コンディショナの今後の開発動向を述べたい。太陽光発電や風力発電といった変動の大きな自然エネルギーによる電力の導入量が増加し、従前の電力システムに占める割合が増加すると、自然エネルギーの変動が原因で系統の電圧や周波数の安定性が失われる、あるいはこれが引き金となって大規模な停電を引き起こす可能性が高まる。

 日本の電力系統に接続できる太陽光発電などの発電容量は、特別な措置をしない場合1000万kW程度が限界と言われている。2010年度末での太陽光発電システム導入量は400万kWに迫っている。国の方針によれば2020年での導入目標は2800万kWとされており、ここ数年で系統の許容値を超えてしまう。