従来の住宅用に加えて、大規模発電所などへと用途を広げる太陽電池。それらに続いて、小型機器への太陽電池の搭載が進みそうな動きが見えてきた。例えばタニタは2011年11月に、太陽電池を搭載した料理用の計量器を発売した。低消費電力化した計量用センサを使ったり、バックアップ用の電池を搭載したりするなど、室内が暗いときにも使えるように工夫している。環境問題への意識が高い30~40代の女性をターゲットに、年間1万2000台の販売を目指すという。

 こうした小型機器への太陽電池の搭載を後押しするのは、太陽電池対応の制御ICである(図1)。太陽電池からの出力が最大になるように制御したり、2次電池へ安全に充電できるように制御したりするものだ。IC自体も工夫する。消費電力を下げて太陽電池からの出力を最大限に活用できるようにした品種や、複数の機能を1チップにまとめて小型化した品種など、小型機器に無理なく組み込めるようにしている。

図1 太陽電池の能力を最大限活用する
CEATEC JAPAN 2011では、小型機器で太陽電池と2次電池を組み合わせる用途に向けた制御ICの展示が相次いだ。太陽電池からの出力を最大限活用するための機能を搭載する。
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 エレクトロニクス関連技術が一堂に会する展示会「CEATEC JAPAN 2011」(2011年10月4~8日、千葉県・幕張メッセで開催)でも、太陽電池対応のさまざまな制御ICや数多くの応用例が展示されていた。今後、このような制御ICを活用した小型機器が増えるだろう。

 以下では、CEATEC JAPAN 2011で見かけた小型機器向け太陽電池技術や応用例につい紹介する。1次や2次電池と組み合わせる

図2 太陽電池向け制御ICの例
各社の太陽電池向け制御ICは、複数の機能を1チップ化してシステム構築の手間を省く(a)、消費電流を低く抑える(b)、2セルでの充電を容易にする(c)、といった機能がある。
(a)ラピスセミコンダクタの太陽電池/2次電池制御IC
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(b)ミツミ電機の太陽電池対応充電制御IC
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(c)ロームの太陽電池対応充電制御IC
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 太陽電池向け制御ICはラピスセミコンダクタやミツミ電機、ロームなどが展示していた(図2)。このうちラピスセミコンダクは、太陽電池と1次電池あるいは2次電池を組み合わせて用いるための制御IC「ML9077/9078」を展示した。腕時計や自転車用速度メーター、リモコン、おもちゃなどに向けたものである。

 1次電池と太陽電池を組み合わせる用途に向けたML9078は、1次電池と太陽電池の電圧を比較して、電圧が高い方をマイコンなどに供給する機能を備える。太陽電池で駆動する間は1次電池の消費電力を抑えられるため、電池駆動時間を延ばしたり、1次電池を小型化したりできる。デモンストレーションでは、色素増感型太陽電池と組み合わせた例を見せていた。「カラフルにできる色素増感型は、海外の腕時計メーカーなどが興味を示している」(説明員)という。

 太陽電池の出力を2次電池に充電する用途に向けるML9077では、従来は8個の部品で構成する必要があった充電制御や過電流防止、低電圧検出などの機能を1チップにまとめた。これにより機器メーカーは、システム構築の手間やコスト、設置面積を削減できる。