こうして,200文字のQRコードを作成する仕様に変更した。日本には後日報告して,承認を得た。

意外な部品が不足に

DM20の出荷式の様子。亀田氏が出席した
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 2009年10月中旬。ついに,初回のロットが完成する日が近づいてきた。亀田は完成を記念する出荷式に出席すべく,中国へ向かった。亀田が飛行機から降りて,ほっとしながらホテルに向かう車の中で,突然電話が鳴った。

 「亀田さん,すみません」

 「どうしたの?」

 「今工場にいるんですけど,生産数がぜんぜん足りません」

 「え?」

 話を聞くと,DM20で新たに採用した皮革風の天板の歩留まりが悪く,不足しているとのことだった。キズがあるなど,天板の仕上がりが悪かったのだが,これは日本と中国での品質基準が異なることが原因だった。天板の影響で出荷が遅れるかもしれないという状況にまで追い込まれたが,何とか予定数を確保して出荷式にこぎ着けた。

次は時間をかけて

2009年11月25日に,DM20の発表会を都内で開催した
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 QRコード機能を搭載し,天板の歩留まりを改善したDM20は,2009年12月11日に発売となった。その後,2010年3月9日には,廉価版の「DM5」を発売した。立石と佐久間が,DM20とほぼ同時並行で開発を進めてきたものだ。それぞれの発表会後の打ち上げは,DM10の打ち上げをした会社近くの中華料理店。DM10のヒットにあやかろうと,打ち上げは必ずそこで開く決まりになっていた。

キングジム社内では,ポメラへの期待が高まっている
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 順調に売り上げを伸ばすポメラ・シリーズ。いつの間にか,立石と佐久間の机の後ろには,開発本部長の名で“ポメラで100億円よろしく”と書かれた紙が張られていた。

 「100億いかないまでも,30億,50億くらいは欲しいな」

 開発本部長は,立石と佐久間に,そうプレッシャーをかける。二人は次世代機の企画書を提出したものの,あえなく差し戻しになってしまった。 「ここは時間をかけて考えよう」

 100億円の達成に向け,立石と佐久間はポメラ・ワールドをどのように広げていくかをじっくり考えている。=敬称略

─終わり─