「やっぱり駄目だなあ」
「電池駆動時間は半分か…」
売れ行きが好調なキングジム「ポメラ DM10」に引き続いて,新製品「DM20」の開発を任された立石幸士と佐久間学。二人は,新たな機能の検証作業で壁にぶつかっていた。それは,携帯電話機と連携するための通信機能である。
2008年11月10日にDM10が発売されて以来,ユーザーからは次世代機に対する要望が次々と寄せられてくる。
「1ファイル当たり全角約8000文字では足りない」
「ファイルを保存するフォルダを管理できるようにしてほしい」
立石と佐久間は,こうしたユーザーの声に応えようと,ポメラのコンセプトを崩さないように注意しながら,新たに追加する機能を決めていった。白紙の状態から作り上げたDM10に比べると,ユーザーの要望を反映すればいい次世代機DM20の企画は,正直,楽だった。
ユーザーからの要望には,「ポメラで入力したテキストを携帯電話機を経由して送信したい」という声もあった。そこで立石と佐久間は,ポメラと携帯電話機との通信機能を検討することにした。ケーブルを使ってつなげる方法や通信キャリアとの連携など,さまざまな手段を検討した。そして最後に残ったのが,Bluetoothを使っての携帯電話機との通信だった。実際に試作品を作って,Bluetoothの通信機能を確かめることにした。
その結果は,冒頭のように惨たんたるものだった。Bluetoothモジュールの消費電力が大きすぎて,電池駆動時間がDM10の半分程度に短くなってしまう。これが致命的だった。おまけに,うまく通信ができない携帯電話機もあった。通信機能の開発は,振り出しに戻ることになる。
これで決まり
「QRコードはどう?」
立石と佐久間が苦労しているのを見て,声を掛けてきたのは亀田登信だった。QRコードは,ラベルライター「テプラ」などに搭載した実績がある。その際に亀田は,複数のQRコードに分割することで長文を表示できることを知り,「これは使える」と感じていた。
「だまされたと思って,QRコードをポメラの画面に表示してみてよ」