何気ない日々の生活の中に製品開発のヒントは落ちている。それなのに、あなたがただ見逃しているとしたら…。
今、顧客の潜在ニーズを効率的に見つけ出そうという取り組みが、一部のメーカーで始まっている。人の行動や人を取り巻く環境(コンテキスト)を観察し、そこで得た情報を写真や記述に起こして分析するのだ。ポイントは、商品開発やマーケティング部門が実施するだけではなく、R&Dや設計部門などに所属する技術者自身も実施する点。そうすることで、発見した顧客ニーズを、より直接的かつ迅速に製品開発に生かすことができる。
本稿では、幾多ある手法の中でも、近年、急速に注目を集めている「エスノグラフィ」を中心に取り上げる。組織全体で取り組むのが理想だが、技術者個人でヒットの種を探るべく、顧客対象の行動を観察するのにも役立てることができる。本稿では3回に分けて、「エスノグラフィの基本」「組織で実践する方法」「個人で実践する方法」をお届けする。
連載
ヒットを生む潜在ニーズの見つけ方
目次
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第3回:<実践!個人編>思い込みを捨てる演習
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第2回:<実践!組織編>見方を変えるとムダが見える
エスノグラフィ手法は文化人類学の分野で発達した学問で、ビジネス分野でどのように応用するかに決まりはない。しかし、ビジネス分野での活用が進む中で「基本形」のようなものは形成されている。
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第1回:<基本>ヒットの裏にある「エスノグラフィ」
上の写真に写るのは、シューズメーカーのアキレス(本社東京)が開発した子供用運動靴のサンプルである。左側が当時、売り上げが伸び悩んでいた既存ブランドのもので、右側が、その起死回生を狙って立ち上げた新ブランドのものだ。この新ブランドは「ある機能」を持ち備えていたことから、子供たちの間で絶大な人気を得た。…