何気ない日々の生活の中に製品開発のヒントは落ちている。それなのに、あなたがただ見逃しているとしたら…。
 今、顧客の潜在ニーズを効率的に見つけ出そうという取り組みが、一部のメーカーで始まっている。人の行動や人を取り巻く環境(コンテキスト)を観察し、そこで得た情報を写真や記述に起こして分析するのだ。ポイントは、商品開発やマーケティング部門が実施するだけではなく、R&Dや設計部門などに所属する技術者自身も実施する点。そうすることで、発見した顧客ニーズを、より直接的かつ迅速に製品開発に生かすことができる。
 本稿では、幾多ある手法の中でも、近年、急速に注目を集めている「エスノグラフィ」を中心に取り上げる。組織全体で取り組むのが理想だが、技術者個人でヒットの種を探るべく、顧客対象の行動を観察するのにも役立てることができる。本稿では3回に分けて、「エスノグラフィの基本」「組織で実践する方法」「個人で実践する方法」をお届けする。