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第4回:お前のゲーム機が燃えているぞ(下)

第4回:お前のゲーム機が燃えているぞ(下)

根津 禎=日経エレクトロニクス
2011/12/22 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2010年10月5日号 、 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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【前回より続く】

 AMショーの開催日はあっという間にやって来た。ゲーム機の正式な名称も「O.R.B.S」と決まった。球体を意味する「orb」から発想し,ほかの商標とかぶらないようにアルファベットの間に点を付けた。

感動のあまり席を立てない

 思えばつらくても楽しい日々だった。ドーム型ゲーム機の魅力に取り付かれて集まった開発メンバーたちにとって,これほど熱中した時間はなかった。「毎日が文化祭の前の部活動のようだった」(東山)。あとはAMショーの来場者に楽しんでもらうだけだ。「ユーザーに受け入れられる自信はあった」(小林)ものの,ゲーム機を購入する店側の反応はどうなるかわからない。「ある意味,破れかぶれの心境だった」(小林)。

 ふたを開けてみれば,大盛況だった。O.R.B.Sを一度体験しようと並ぶ人の列は,絶えることがなかった。再び列の後ろに並び,何度も楽しむ人もいた。ゲームが終わっても,感動のためかしばらく席を立たない人もいた。

「第39回AMショー」に出展されたO.R.B.S(左)。プロジェクターを上部に配置した構造を採る。(図:バンダイナムコゲームスの資料を基に本誌が作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 来場者から取ったアンケートの結果は,全出展ゲーム機の中で第3位。商用化直前のゲーム機ばかりがずらりと並ぶ中で,商用化の計画のない試作ゲーム機としては異例の快挙を成し遂げた。

 ランキング表のコピーを眺めながら東山は自宅で一人涙した。本業である家庭用ゲーム・ソフトの開発に戻るタイムリミットが迫っていた。ドーム型ゲーム機にほれ込み,部署の垣根を越えてまで参加した彼にとって,その感動はより深かった。

キラー・コンテンツを探す

 こうして,商用化へ一歩近づいた「O.R.B.S」。だが,その先には,厚い壁が待っていた。販売部門の説得である。大きくて高価な筐体には,「坪単価というのを知っているのか」といった罵声が浴びせられた。

 最大の問題はコンテンツの不在だった。AMショーで披露したスターブレードは,あくまでドーム型ゲーム機の魅力を伝えるデモ・ゲーム。これだけでは,商用化は難しかった。「本当に売る気なら『ガンダム』のような強力なコンテンツが必要」とも言われた。ガンダムのコンテンツを持つバンダイとナムコは当時,別々の会社である。ナムコがガンダムのゲームを製作するのは容易ではなかった。 

 有力なコンテンツを搭載するため,開発チームはナムコ社内だけでなく,社外の有名ゲーム・クリエーターなどにも広くO.R.B.Sを披露した。皆一様に「面白い」と言ってくれる。だが必ず,「ビジネス・スキームの構築が難しいね」という一言が付いて回った。同時に工業製品などゲーム用途以外への転用も考えた。こうした取り組みも実を結ぶことなく,開発チームは徐々に熱を失っていく。

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