【前回より続く】

 「ただいま大変混雑しています。W-ZERO3の試用をご希望のお客様は,しばらくお待ちください」――。2005年10月26~29日に千葉・幕張メッセで開かれた展示会「WPC EXPO 2005」で,ウィルコムとシャープのブースはちょっとしたパニックに陥っていた。前週の10月20日に発表された「W-ZERO3」の初代機「WS003SH」にとって,初の一般向けのお披露目になったからだ。

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ブースにお客さんが大行列

 W-ZERO3はウィルコムとシャープ,米Microsoft Corp.が共同開発した携帯情報機器(PDA)型のPHS端末である。ウィルコム 営業開発部 企画マーケティンググループ 課長補佐の須永康弘が企画し,これまで「ザウルス」などのPDAを手掛けて来たシャープ 通信融合端末事業部が開発を担当した。Microsoft社のPDA向けOS「Windows Mobile 5.0」を組み込み,ウィルコムとネットインデックスが共同開発したPHS通信モジュール「W-SIM」を使って通信する方式を採る。

 2005年10月20日の製品発表会では,2005年度内に10万台出荷するというウィルコムの見通しを一笑に付した記者もいた。しかし,ふたを開けてみれば前評判はうなぎ登り。ニュース・サイトの記事やネットの掲示板でも好意的な評が多かった。ヒットの前兆はWPC EXPOの時点で,既にあった。

 ウィルコムの須永やシャープ 通信融合端末事業部 第1商品企画部 部長の中川潤子は,ブースに詰め掛けるユーザーを見て,ようやく「これはいけそうだ」という手応えを感じた。W-ZERO3の製品企画の中心にいた二人は,自分の目で反響を見て取るまで,本当に売れるかどうか半信半疑だったという。

W-SIMの不具合に付き合う

 だが実は,製品発表会見や展示会場に持ち込まれた19台の試作機は,製品とはいささか懸け離れていた。9月に完成していた1次試作品を基に,最終仕様の部品をいくつか組み込んだ手作り品だったからだ。ソフトウエアも不安定な暫定仕様だった。「スケジュールがあまりにもギリギリで最終試作品が間に合わなかった」(中川)。